<日本ハム2-1楽天>◇28日◇札幌ドーム

 日本ハム大谷翔平投手(19)が打って、走って、勝率5割復帰へと導いた。0-0の6回、先頭打者で3安打目となる中前打でチャンスメーク。1死後に併殺性の二ゴロで、遊撃手へ向かって決死のスライディングを敢行。送球失策を誘い、一気に本塁へと生還して先制点へつなげた。開幕3戦目となる3月30日オリックス戦以来、今季2度目の猛打賞&激走で再び、反攻の灯をともした。

 失いかけそうな流れを、3度の快音でせき止めた。大谷の奮闘が、ようやく報われた。均衡が破れずにいた6回、先頭打者。ボール気味の低めスライダーをすくい、中前へとはじき返した。「単打ですけれど、しっかりつなげて良かった」。高い技術での3安打目、約3カ月ぶり今季2度目の猛打賞。かすかな突破口を懸命な全力プレーで一気に広げた。1死後、一塁走者。北が平凡な二ゴロを放つとトップギアに入れた。

 併殺かと思われたが、あきらめない。二塁ベースカバーに入った楽天の松井稼へ向かって、スライディングした。併殺を崩しにいく。名手で鳴らす二塁手の藤田が焦って悪送球。ボールが左翼を転々とするのを確認すると、すぐに立ち上がった。再加速して、本塁まで生還した。試合を決める先制点を呼んだ。前夜は5失策が完敗の伏線だった。「球場は広い。うちが取られる時もあるし、そうじゃない時もある」。フラッシュバックした苦い思いを燃料に、駆け回った。

 弱冠19歳ながら用意周到な執念が、根底にある。この3安打目で約3カ月ぶりの固め打ち、今季2度目の猛打賞。試合前に楽天先発の青山と対戦経験が多い、先輩の谷口からの聞き取りで傾向と対策を練った。「僕の中では外スラ(外角スライダー)と真っすぐ、ツーシーム」と絞り切った。1、3回の安打は直球。澄んだ読みで完璧に狙い通り、仕留めた。陽岱鋼ら主力に故障者続出の沈滞ムードを、振り払った。

 リーグ戦再開後のチームの初勝利で、勝率5割へ1日で復帰させた。「昨年よりしっかりバットが振れているし、見極められている」。最速160キロで脚光を浴びる投手だけではなく、打者でも進化を遂げている自負がある。栗山監督に「チームを勝たせろ」と課せられたのが、今季の使命。大谷は全身全霊の二刀流で、果たしていく。【高山通史】