<楽天1-2日本ハム>◇9日◇コボスタ宮城

 1カ月ぶりに戦列復帰した日本ハム陽岱鋼外野手(27)が、値千金の決勝打を放った。1-1の同点で迎えた8回1死二塁、楽天辛島から左前適時打で均衡を破った。左膝裂傷を負った6月9日中日戦以来、「3番中堅」で先発出場し、大谷を援護する貴重なV打。チームを再び貯金2へと導いた。

 晴れやかな笑顔が、りんと咲いた。1-1の終盤8回。陽岱鋼が均衡を破った。1死二塁。4打席目で目覚めた。強まる雨を切り裂き左翼前へ引っ張った。「とりあえず三振だけは防ぎたいと思った」。故障から復帰後、即スタメンで勝負を決めた。必死の思いは決勝打につながった。一塁ベースを踏むと、すぐさまベンチへ向かって拳を突き出した。「ホッとした」。あふれんばかりのスマイルをチームに注いだ。

 苦悩の日にピリオドを打った。ちょうど1カ月前。6月9日の中日戦で本塁クロスプレーで左膝裂傷を負い、戦列を離れた。「初めて自分の骨を見た」。チャームポイントの笑顔が凍り付くほど容体は深刻だった。傷口は予想以上に大きく完治まで長引いた。抜糸は予定より5日押した。「人生で初めてのリハビリ。どうして良いか分からなかった」。体は動けなくても持ち前の明るさは健在。ユニホームを着てグラウンドに登場。雰囲気づくりに徹した。

 栗山監督は「ダイ(陽岱鋼)の顔はオレの安心剤。アイツの代わりはいない」とカムバックを喜んだ。この日の試合前には一番乗りでベンチ前席に陣取った。真新しいタオルでバットを入念に磨き精神統一。チームスタッフに冷やかされると真顔で追いかけ回した。「今日1軍に帰ってきて、何とかチームに迷惑をかけないように練習から意識していた」。チームの中心に太陽のような存在が帰ってきた。【田中彩友美】