<日本ハム1-3ソフトバンク>◇3日◇札幌ドーム

 日本ハム大谷翔平投手(20)が、公式戦日本人最速タイの161キロをマークした。ソフトバンク戦(札幌ドーム)の7回、李大浩の打席でこの日128球目に161キロの直球を投げ込んだ。162キロを出した球宴に続き公式戦でも10年の由規(ヤクルト)に並ぶ日本人最速。7回9安打2失点で4月27日ロッテ戦以来の黒星となる2敗目も圧倒的な存在感を見せた。

 球界の常識を覆す衝撃的な記録と、3カ月ぶりの黒星が同時に刻まれた。7回9安打、3与四球で2失点。4回をのぞけばすべての回で走者を背負った大谷は「(調子が)よくはなかったです、全体的に。3者凡退も少なかったですし、厳しいかなと思います」。2回に4安打を浴びて先制され、1度もリードすることなく降板。悔しさしか残らなかった。

 だが、今季最多タイ4万1208人の胸には、大谷の底知れない能力の高さと、記録の証人になった満足感が残った。制球が乱れ2回まで52球を要しながら5回2死二塁は柳田を空振り三振、6回1死一塁は細川を併殺打に仕留めて「0」を並べた。

 そして7回だ。2死二、三塁のピンチ。「最後(のイニング)かなと思っていたし、ここで点をやったら終わりだと思った」。李大浩を相手に力を振り絞った。球数はプロ入り最多を超えていた。1ストライクからの2球目。外角高めの直球はバットをかすめてバックネット方向に飛んだ(ファウル)。球速表示は161キロ。128球目だった。「数字はあまり当てにならないので」。本人は平然だが、驚きが球場を支配していた。

 球数が増えてくると、当然、疲労感は増す。指の握力も低下する。だが大谷は、昨年の入団時から「100球を超えて同じように投げられるかどうか」と言い、トレーニングを重ねてきた。160キロ超えに注目が集まった今季の球宴前。そろって出場が決まった大野に、大谷は「1イニングだから、きっと出ないですよ」と弱音を吐いていた。ピンチを背負い、強打者を迎えるときの方が球速が上がることを、自らの感覚で悟っていた。

 初回の中村、内川の打席で計測した160キロと合わせ、1試合3度の160キロ以上は公式戦では自己最多。いつもは辛口な栗山監督も「よく粘った。よく立て直した」と褒めた。中6日で向かう次回登板は再びソフトバンク戦(ヤフオクドーム)。「今日のようなゲーム展開にならないように、しっかり投げたいです」。自分を納得させられるのは球速ではなく、結果しかない。【本間翼】