ゴメスは大丈夫。天王山のカギを握るトラの主砲は、復調モードで巨人3連戦を迎える。直前の広島3連戦は14打席で1安打7三振ながら、4三振した翌日の23日は冷静に球を見極めて2四球を選んだ。成績ほど深刻な状態ではないと、首脳陣はみている。

 新妻と連れ添って阪神マウロ・ゴメス内野手(29)は25日、ベビーカーを押しながら東京の街を散策した。夕暮れ時、つかの間の休息を楽しんでいた。首位巨人と激突する。闘志を胸に秘め、静かに言う。「1本出て、気分的にも楽になった。次はもっと打てるように頑張りたい」。前日24日広島戦の最終打席で左前打。3試合ぶりの安打で胸のつかえが取れた。

 不動の4番は天王山でも活躍できるか。この点こそ、首位奪取の大きなポイントだ。直前の広島戦は12打数1安打7三振。勝負どころで1本が出ない“スランプ”ぶりがクローズアップされた。だが、決して深刻な状態ではない。2個の四球に復調の予兆があった。

 22日の広島戦はエース前田の内外角を駆使する配球に苦戦し4三振。内角直球にバットは空を切り、外角スライダーに体勢を崩された。尾を引きそうな内容だったが、翌23日は対応してきた。1回2死二塁。大瀬良に内角を突かれたが、外角低めスライダーにバットが止まり四球を選んだ。4回も追い込まれてから粘り、2球続いた外角低めの変化球を見極めて四球で歩いた。結果を求めて打ち気にはやることなく、冷静だった。関川打撃コーチも「最初の1、2打席は前日のこともあったし、しっかり見極めていた」と評価する。

 5回に空振り三振。7回は1死満塁の先制機で力んで空振り三振…。不振が浮き彫りになったわけだが、オマリー打撃コーチ補佐は違う見方をする。「4打席目まですべてカウントを3-2まで持ち込んでいただろ。その意味を考えてくれ」。相手バッテリーの意のままに打ち取られたわけではない。粘って球数を投げさせた末の惜敗。空回りした三振ではなかった。じっくり勝負する姿勢までは崩されていない。

 普段の力を発揮するために、どうすればいいのか。関川コーチは「23日の三振は、マートンがいなくなった分、気負ったのかもしれない。勝負どころになると力も入る。そのなかで、いかに打席で冷静になれるか」と説明する。26日は11打数無安打5三振と抑えられる難敵杉内が相手だ。ゴメスは「大事なシリーズ。相手が誰であろうと関係ない」と話す。24日は左前打の直前、8回の打席で中堅に大飛球を放ち的確なミート感覚も戻りつつある。舞台は14日に19号ソロを放った東京ドーム。爆発の機運は高まっている。【酒井俊作】