<DeNA5-4巨人>◇30日◇横浜

 ナインから水をかけられるのが至福の時間だった。DeNA桑原将志外野手(21)が今季2度目のサヨナラ打を放つと、ヘルメットを投げ、跳びはねた。中畑清監督(60)から頭をたたかれ祝福されると自ら抱きついた。お立ち台でも「ありがと~ございま~す。最高で~す」と叫び、持ちネタのコマネチを何度も披露。横浜スタジアムを笑いで包んだ。

 食らいついた結果だった。延長10回2死二、三塁。巨人マシソンの初球。155キロの直球に手が出なかった。「球が速くてヤバイと思った。何とかしないと」。その思いだけでバットを振った。カウント1-2からの4球目。156キロの直球に反応。バットを折りながら左前に落とした。「どうなったか分からなかった」。取り返したい思いがあった。8回の守備。無死一塁から坂本は中堅を越える打球。桑原は懸命に追うも届かず、二塁打にしてしまった。「あのプレーが悔しくて申し訳なかった。取り返さないと」。雪辱の一打だった。

 桑原の左目横にはホクロがある。それを“やる気スイッチ”と呼んでいる。「困ったらここを押すと燃えるんです」。この日も打席に入る前に触り、気合を入れた。

 今季は荒波の故障で巡ってきた1軍。5日の巨人戦(新潟)でもサヨナラ打を放つなど、巨人戦では勝負強い。中畑監督は「勢いのある選手。そういう選手が欲しい」と、今や欠かせない戦力と認める。チームはまだ3位と6・5ゲーム差あるが、自力でCS進出のチャンスが残っている。残り33試合。21歳の桑原が風を吹かせる。【細江純平】

 ◆桑原将志(くわはら・まさゆき)1993年(平5)7月21日、大阪府生まれ。福知山成美では3年夏に京都府大会準決勝で龍谷大平安に敗れるなど甲子園出場経験なし。11年ドラフト4位でDeNA入団。今季成績は37試合、98打数25安打(打率2割5分5厘)、本塁打なし、11打点。174センチ、74キロ。右投げ右打ち。推定年俸610万円。

 ▼DeNAが今季6度目のサヨナラ勝ち。巨人戦では8月5日に次いで今季2度目だが、この前も延長12回にサヨナラ安打を放ったのが桑原。巨人戦でシーズン2本のサヨナラ安打は、94年ローズ(横浜)が4月12日に石毛から、9月23日に桑田から記録して以来、20年ぶりだ。これで桑原は今季延長イニングで中安、左2、右安、左飛、左安の5打数4安打、打率8割を記録している。