<中日6-0阪神>◇5日◇ナゴヤドーム

 受け取った花束の鮮やかさとは対照的だった。阪神能見篤史投手(35)が史上140人目の1000奪三振到達。だがベンチへと引き揚げる足取りは、あまりに重かった。4回1死二塁で、ルナからフォークで奪った。だが節目の数字は、意味を持たなかった。5回0/3で降板し、6安打4失点。リーグワーストの12敗目を喫し、うなだれた。

 「先に先制点を取られてしまったので」

 節目到達の直後に、のみ込まれた。4回2死三塁から連続四球で2死満塁。マウンドに駆けつけた中西投手コーチから「小さくなりすぎるな」と指示を受けた。だが続く6番藤井への決め球フォークが浮いた。高く跳ねた打球は頭上を通過。先制2点適時打となった。カウント2-2から決めにいく場面で、半速球になった。6回は2安打と2四球で失点。無死満塁と走者を残して降板した。

 2巡目で突如のみ込まれた。初球から積極的に振りにきた1巡目までは1安打も許さない。3回終了時点で要した球数はわずか21球。「普通です」と話したが、快調な立ち上がりだった。だが2巡目の4回に低めの変化球とコーナーの出し入れを見極められると苦しくなった。暴投も絡んだ。力が入っていた。

 「1点もやりたくなかったですから」

 先取点阻止への過剰な意識から、大胆さを失った。中西コーチも「もうちょっと大胆にいってほしいんだけど。1点もやれないような感じだから」と首をかしげた。のらりくらりでかわしていった中日山本昌とは対照的だった。

 とはいえ、後ろばかり向いてはいられない。9月ローテの軸を託された男だ。次週は3カードぶりに巨人戦へと向かうことが内定している。逆転Vには能見の力は必要不可欠。このまま終わっては、男が廃る。【池本泰尚】

 ▼通算1000奪三振=能見(阪神)

 5日の中日19回戦(ナゴヤドーム)の4回、ルナを空振り三振に仕留めて達成。プロ野球140人目。初奪三振は05年4月3日ヤクルト3回戦(大阪ドーム)で青木から。1130回2/3での達成は歴代15位のペース。阪神では(1)江夏豊940回(2)井川慶1058回(3)仲田幸司1122回2/3に次ぎ4位。