ソフトバンクの来季監督に球団OBの工藤公康氏(51=日刊スポーツ評論家)の就任が決定したことが16日、分かった。CS開幕前日に秋山幸二監督(52)が今季限りの退任を電撃的に発表し、球団は後任候補を工藤氏に絞って、この日までに要請。関係者によれば、工藤氏は監督就任を引き受けることを球団サイドに伝えた。最終の条件交渉を残すものの、近日中に発表される運びとなった。

 秋山監督の突然の辞任発表から2日。ソフトバンクが後任人事をまとめ上げた。複数の関係者によると、王球団会長から口説かれ、工藤氏は就任要請を受諾した。条件面を含めて正式サインまで時間を要すものの、来季監督につくことが事実上決まった。

 王会長を中心に行われた後任探しは、当初から工藤氏で一本化されていた。現役時代は延べ5球団で29年間プレー。西武黄金期を支え、王監督が就任した95年にダイエーへ移籍。低迷していたチームを変革。バッテリーを組んだ城島を一流捕手に育てたことでも知られ、99年ダイエー初優勝に貢献。47歳までプロで投げ続け、歴代13位の224勝。14度のリーグ優勝、11度の日本一と実績は十分。兄貴分として人望も厚い。

 11年限りでの引退後、DeNA監督や他球団のコーチなど球界からオファーが届いたが、この3年間は断り続けた。小学生を対象にした野球教室や東日本大震災の被災地支援活動などに力を注ぎ、野球解説者として見識を広めた。ソフトバンクのキャンプ取材も欠かさず、2軍の若手の成長に強い関心を寄せた。秋山監督の依頼で若手投手の“指導”を行ったこともある。

 今回は秋山監督の電撃退任に揺れる古巣からのオファー。監督と投手の関係でダイエー初日本一を達成した王会長からの熱烈要請とあって、決断に踏み切った。今春から筑波大大学院の人間総合科学研究科に入学し、けがの予防につながるトレーニング方法やコーチング理論を研究しているが、卒業に必要な単位取得はほぼ終了しており、休学の形をとる見通しとなった。

 王会長は「昨日(15日)より前進している。まだちょっと時間はかかる」と話し、工藤新監督の誕生が近いことを示唆した。水面下では楽天を退団した佐藤義則投手コーチ(60)と鈴木康友内野守備走塁コーチ(55)の招請に動くなど組閣作業も同時に進めている。

 工藤氏が当時の球団フロントとの確執で99年オフにFA移籍する際、残留を願うファン15万人が署名したのは有名。ついに監督として帰ってくる。

 ◆工藤公康(くどう・きみやす)1963年(昭38)5月5日、愛知県生まれ。名古屋電気(現愛工大名電)から81年ドラフト6位で西武入団。94年オフにダイエー、99年オフに巨人へFA移籍。07年、門倉のFA加入による人的補償で横浜移籍。10年自由契約で西武復帰。プロ野球最多の実働29年で224勝142敗3セーブ、防御率3・45。93、99年リーグMVP。最優秀防御率、最高勝率を各4度、最多奪三振2度。87年正力賞。日本シリーズ出場14度は王(巨人)に並ぶ最多。西武、ダイエー、巨人で日本一になった。10年に西武退団後、1年の浪人を経て引退。12年から日刊スポーツ評論家。左投げ左打ち。家族は夫人と2男3女。長男阿須加は俳優、長女遥加はプロゴルファー。