<セCSファイナルステージ:巨人2-5阪神>◇第2戦◇16日◇東京ドーム

 一塁へ走りだした阪神マット・マートン外野手(33)は、一瞬だけスピードを上げた。左足首が痛む。それでも最後まで全力疾走する必要はなかった。

 「とにかく1試合1試合を大事に戦いたい」

 そんな思いが詰まった一打が三遊間を破った。3-0でリードした5回1死二、三塁。内角141キロを捉えると、きしんだ音がドームに響いた。バットが折れる。それでも放たれたゴロは左翼にたどり着いた。湧き上がる大歓声とともに、マートンもスピードを緩めた。オーバーランも数歩だけ。苦しい中での2点適時打だった。CS4戦目の初適時打となる、意地が詰まった1本は、ゲームの終盤へ大きな好作用をもたらせた。

 実は左足首を痛めていた。「大丈夫だよ」と試合後は語ったものの、動きを見れば影響が懸念された。午前中、宿舎から出かけるのも足を引きずる状況だった。東京ドーム入りしてもそれは変わらない。ストレッチも満足に行えなかった。ダッシュが入るウオーミングアップでは、ベンチ裏に引っ込んだ。トレーナー、首脳陣も心配する一大事。それでもマートンはグラウンドに戻った。痛めた場面については語らず。笑顔で練習を見守るファンにサインをするなど、左足を引きずる姿以外は普段と変わらなかった。

 「中日は3連勝した後に負けたこともある。その先は考えず、まずは明日(17日)に集中したい」

 12年にはCSファイナルステージで3連勝した中日が、その後3連敗で日本シリーズを逃した。巨人が手ごわい。だからこそ1戦1戦。自分も一緒だ。勝利は痛みも和らげることだろう。あと2つだ。【松本航】