<第1回プロ野球12球団合同トライアウト>◇9日◇静岡・草薙

 今年も宝の山-。12球団合同トライアウトが9日、草薙球場(静岡)で行われ、中日落合博満GM(60)も視察に訪れた。バックネット裏に5時間陣取り、全59選手を丹念にチェック。個人名は明かさなかったが「いい選手がいっぱいいる」と発言。DeNAを戦力外になった左腕、陳冠宇(チェン・グァンユウ、24)に強く興味をもつなど、独特の目利きで今年も人材発掘に本腰を入れる。

 視線の先に、確かに光るものが映っていた。バックネット裏の関係者ルーム。その最前列に陣取った落合GMは5時間もの間、グラウンドからひとときも目を離さなかった。

 「今は何も言えないけど、いい選手はいっぱいいる。いい選手がね」

 笑みを浮かべながら、短く言い残した。有賀編成部長も「個人的に見てもいい選手がいた」と話した。

 GM就任直後だった昨年も、同じ草薙球場でトライアウトを視察し「宝の山」と表現していた。ロッテを戦力外になった工藤を見そめ、翌日から名古屋に呼び寄せてテスト、契約に至った。工藤は今季、打率3割8厘(規定打席未満)で、プロ初本塁打を記録するなど輝きを取り戻した。

 今年も鑑識眼をくすぐる選手が複数いた。中でもDeNAを自由契約になった24歳左腕の陳冠宇には強い興味を持ったようだ。細身ながら鋭い腕の振りから最速145キロの速球とスライダーで打者を手玉にとった。特に左の堂上(中日)を二飛、佐藤(ヤクルト)は134キロスライダーで腰を引かせて空振り三振。左キラーという最大の特性をアピールした。

 台湾の左のチェンといえば、竜党には、あのチェン・ウェイン(現オリオールズ)が思い浮かぶ。DeNAでは4年間で通算1試合登板のみだが、台湾代表でも活躍する素材は高く買われていた。外国人枠の関係で放出されたが、若さもあり人間性もいいという。

 中日の補強ポイントにおいて、特に左投手は重要。先発では大黒柱の大野、実績組の雄太、山本昌らがいるものの、ドラフト2位の浜田智博(九産大)のほか新外国人が獲得できるかどうか。陳冠宇は外国人扱いのため中日でも外国人枠の問題が立ちはだかるが、候補になるのは間違いない。

 陣冠宇以外にも熱心にペンを走らせた落合GM。「いい選手」の獲得に向け、すぐに動きを具体化させる。【柏原誠】

 ◆陳冠宇(チェン・グァンユウ)1990年10月29日、台湾生まれ。国立体育学院在学中の11年2月に来日し、横浜(当時)と契約。12年は育成契約になったが4年目の今年7月に支配下登録。同16日の広島戦で来日初登板。先発で3回途中4失点。通算の出場はこの1試合だけで0勝0敗、防御率11・57。10月に自由契約になった。9月のアジア大会(仁川)に台湾代表として出場、2試合に登板した。179センチ、75キロ。左投げ左打ち。