新人ながらチーム捕手最多の92試合出場を果たした阪神梅野隆太郎(23)が28日、日刊スポーツのインタビューに応じた。無我夢中の1年間を振り返り、胸に秘めた思いを吐露。未来について語り始めると、身近な存在として藤浪晋太郎投手(20)の大きさに及んだ。

 1年を振り返ると悔しさが先を行く。梅野が最も印象深い一戦に挙げたのは7月23日巨人戦(甲子園)。同点の9回2死満塁で能見のフォークを左後方へはじいた(記録は暴投)。それまでワンバウンド投球を止めること5球。無情にも6球目が勝負を決めた。

 梅野

 あの瞬間は、やってしまったとかではなく、なんともいえない感じだった。冷静になって本当に悔しさが…。山田さん(バッテリーコーチ)は「考えていることはすごく良かった。自分で反省する点は分かっているだろうから」と声をかけてくださった。能見さんには自分から謝りにいった。1点勝負で球数を何球もかけた場面。こういう時は寝付けない。

 甲子園では試合後、ユニホームのまま1人でビデオ室に向かう。鳴尾浜の寮に戻ると日付が変わっていることも多かった。体は疲れているのに、ベッドでは次の戦いが待っていた。

 梅野

 布団に入ると、あの1球をなんで選んだのかと考え出す。(午前)3時まで寝られない日もあった。夏場は食事できていない感覚はないのに、体重が10キロ落ちた。精神的なところだったのかもしれない。

 財産もあった。日本シリーズでは第2戦の1イニング、マスクをかぶった。年下の松田をリードし1回無失点。盗塁も刺した。

 梅野

 最高でした。正直今までにない雰囲気で息苦しさがあった。でもここまできたらやってやろうと思った。シリーズは年下の(藤浪)晋太郎が、1球1球に魂込めて勝負をしていく姿が印象的だった。どれだけ厳しい場面で戦っているのかは、見ているだけでも伝わってきた。

 藤浪とはシーズン中にもよく食事に出かけた。未来のエースの生き様は梅野にとっても刺激だった。

 梅野

 晋太郎と同じチームというのは本当に幸せで。人間としてもしっかりしている。年下、まだ20歳なのに「僕が引っ張っていく」と言う。若手が頑張らなければと、晋太郎の発言で余計に思う。ザキ(岩崎)も5勝した。そういう人が増えることに自分が貢献できたらうれしい。

 ドラフト直前は阪神入団を想像すらしなかった。今は心からタテジマに愛着を持っている。

 梅野

 感謝しかありません。今年に関しては和田監督が使ってくれた。来年は143試合出た中で、期待に応えたい。自分が言うのもなんですが、日本一を狙えると思う。そのときのキャッチャーでいたい。

 藤浪、松田ら同世代が中心となって勝つ。この1年を無駄にはしない。【取材・構成=松本航】

 ◆梅野隆太郎(うめの・りゅうたろう)1991年(平3)6月17日、福岡県生まれ。福岡工大城東-福岡大。3月28日巨人戦で球団45年ぶりに新人捕手として開幕戦出場。4月27日DeNA戦で初本塁打を放つなど7本塁打。7月1日ヤクルト戦では2打席連発も記録した。92試合に出場し、打率1割9分7厘。173センチ、80キロ。右投げ右打ち。