カギは「ブルドーザー投法」にあり!

 阪神岩田稔投手(31)が29日、日刊スポーツに復活の要因を明かした。今季は不振で開幕から出遅れながら、最後はリーグ2位の防御率2・54で9勝をマーク。わずか2勝に終わった昨季からのV字回復を遂げた。なぜ復活できたのか-。岩田本人、個人トレーナー網川翼氏(32)の証言から真相に迫った。

 たった数センチかもしれない。微修正が違いを生んだ。今季1軍初登板となった4月20日ヤクルト戦(甲子園)。岩田は捕手のサインをのぞきこむ際、以前より目線と腰の位置を下げた。

 岩田

 自分はどうしても上体が浮いて、下半身が突っ立ったまま投げてしまう。もっと重心の位置を低くして、足腰を動かそうという意識づけ。(サインをのぞき込む)投球動作の入りで(重心の低さが)甘かったら、その時点で腰が抜けてしまう。そうなると、いくら投げる時に重心を下げようと思っても、最初の位置より低くならない。そう教えてもらったから。

 岩田は走者がいなくてもセットポジションから投球する。その初動作から、マウンドにめり込むようなイメージ。指摘したのは昨季から個人トレーナーを務める網川翼氏だ。昨季は2勝どまり。今季も開幕前の2軍戦で4回10失点と大炎上し、開幕ローテの座を剥奪された。もう後がない状況での今季初登板。網川氏は「サインを見る時から重心を低くしよう」と助言。腰から曲げてのぞき込むのではなく、股関節から曲げる感覚がハマった。

 網川氏

 球速が落ちても、できるだけ重い球で押し込んで、直球でファウルを取ろう、と。重心をより低くすることで体重移動が前に行きやすくなり、打者に近いポイントでボールを押し込めるようになった。歩幅自体は変わっていないかもしれないけど、股関節の移動距離は伸びたと思う。低い位置で地面にスライドできるようになった。

 サインをのぞき込む際の低い重心をキープしたまま、膝を曲げてセットを構える。そして、地面に対して平行移動する感覚で下半身を滑らせていく。結果、右足を突っ張ったまま上体でかぶせて投げる悪い癖が解消され、どっしりした下半身の力が上半身にしっかり伝わるようになった。

 岩田

 ボールの質が変わった。体の中でボールをたたけているイメージ。ボールを押し込めるようになったから、リリースポイントも打者に近くなったと思う。実際、真っすぐでファウルを取れるようになったし、スライダーや変化球のキレも良くなった。

 フォーム改良と同時期に、首脳陣のアドバイスもあって投球テンポを早めた。2つの変化がかみ合い、復活ロードは一気に開けた。地面にめり込むブルドーザーのように「マウンドの傾斜を下半身でエグっていく感じ」。数センチの下方修正を敢行した時点で、復調は必然の流れとなった。【取材・構成=佐井陽介】