初ブルペンでマー君級の剛球を見せた。楽天のドラフト1位安楽智大投手(18=済美)が2日、沖縄・久米島キャンプで初めてブルペン入りした。捕手が立った状態で42球、直球にスライダーを交えて力強く腕を振った。見守った大久保博元監督(48)はヤンキース田中をほうふつとさせる直球だと絶賛した。高校時代に発症した右肘の故障が心配されていたが、不安を一掃。将来のエース候補が片りんを見せつけた。

 首脳陣からはセーブされていたが、安楽は投げたい気持ちを抑えられなかった。ブルペンに立つと顔は少しだけピンク色に火照った。前日の初日には入れず、待ちわびた場所。ましてや隣では尊敬する松井裕が投げ込んでいる。自然と力が入っていった。「まさにテレビで見ていたブルペンでした。あらためて僕の投球を見てくれた方もいる。本当に肘に不安がないというのを見てもらいたかった」。あっという間の42球だった。

 注目を独り占めするだけの、球質だった。セットポジションから小さいテークバックで力をためる。肘の関節がグニャリと曲がるような独特のフォームで、キレのある球を投げ込んだ。球速はおよそ135キロ前後。ばらつきがあったが、ブルペン捕手が構えたミットを浮き上がらせるような伸びがあった。「ブルペンに入れたことが収穫。腕はしっかり振れていたと思う」と手応えを口にした。

 大久保監督も驚いた。ブルペンの捕手側から見守り、「打者目線で見たけど、差された。球がぐーんと来た。(田中)将大に似ているね。雰囲気とかイメージが。威圧感がある。エグイと思わせる球だった」と絶賛。元楽天のエース田中になぞらえるほどの衝撃。高校2年の冬に発症した「右肘尺骨神経まひ」の不安を一掃し、「肘は全然大丈夫だね」とまで言わしめた。

 愛称も内定した。その名も「モニカ」だ。肩幅が広く、大きいことから小山伸から命名された。水球で鍛え上げた歌手吉川晃司になぞらえ、デビュー曲のタイトルがつけられた。吉川はこのデビュー年に日本歌謡大賞最優秀新人賞など8つの新人賞を独占。俳優としてもブルーリボン賞、日本アカデミー賞といった新人賞も総なめにした。命名者の小山伸は「まだ浸透していない」と話すが、縁起の良い愛称が、広まっていくのは間違いなさそうだ。

 上々の滑り出しとなったが、大久保監督はこうも続けた。「あの球を見たらいけるなと思う。でもそこを戦力と考えたらAクラス、常勝軍団にはなれない」と。高卒新人に過度な期待はかけず、じっくりと育てたいと強調した。それでも安楽は「僕は目標を一切変える気はない。開幕ローテを目指します」と言い切った。次のブルペンは明日4日を予定。固い信念を曲げずに、アピールし続けていく。【島根純】