メジャー再挑戦を明言した。ポスティングシステム(入札制度)で落札されたヤンキースとの交渉が決裂し、残留が決まった西武中島裕之内野手(29)が10日、西武ドーム内で契約更改交渉を行い、現状維持の年俸2億8000万円プラス出来高(推定)でサインした。前日9日に帰国したばかりだが「気持ちは切り替わっている」とすっきりした表情を見せた。今季中にも可能な海外フリーエージェント(FA)権の取得後に大リーグを目指す。

 悔しさはニューヨークに置いてきた。中島は無念さを洗い流し、胸を張って西武ドームの会見の席についた。「ニューヨークに行って、契約はなかったんですけど、それはそれでしゃあないなと。行った日にすぐ駄目になったんで、旅行に来たと思っとこうと。このオフちょっと隠れとったんで、旅行に行けて良かったかなと思います」。3泊5日の疲れも見せず、西武で迎える12年シーズンに気持ちを切り替えた。

 初心に帰ってメジャーに飛び込むつもりだった。「金額はなんぼでも良かった。1年くらいはバックアップでも勉強のつもりで我慢して、何でも吸収したいと思っていた」と、メジャーのスター軍団で控えからスタートする意気込みもあった。

 だが「1年たった時の契約に交渉の余地がなかった」と、来オフも交渉の主導権をヤンキースが握る条件が最後までクリアできなかった。結果を出しても報われる保証がなく、将来的な希望が見えない。そこで最後は代理人の「やめた方がいい。この条件で行くならあと1年我慢して、いろんな球団と話した方がいい」という説得に従った。

 それでも恨み言はない。ポスティングシステムについて「ちょっと厳しいのかもしれない」と難しさを口にしたが、大リーグにもヤンキースにも不満を述べることはなく、目指す方向は変わらない。「挑戦できるときがきたらまた挑戦したいと思いますし、今年はそのタイミングじゃなかったのかなと思います」と言い切った。

 照準はすでに切り替わっている。気がつけば3週間余りで南郷春季キャンプがスタート。「トレーニングは明日からやります」と11日からの自主トレで再始動する。「いいように言ってくれる人もいるだろうし、悪いように言う人もいるやろうけど、一生懸命やります。チームのために、日本一になるために、ベストを尽くしたいと思います」。いったんは快く送り出してくれた人たちのためにも、もう1年精いっぱいのプレーを見せる。そしてまたすぐ、アメリカに忘れ物を取りにいく。【大塚仁】