なにやら暗雲が…。阪神平野恵一内野手(32)が12日、兵庫県西宮市の球団事務所で2度目の契約交渉に臨んだが、条件面で合意できず保留した。提示は前回と同じ2000万円増の1億8000万円プラス出来高払いとみられる。次回交渉を代理人に任せることも検討。自費キャンプ突入のおそれが出てきた。

 努めて柔和な表情をつくろうとしたが、内心のモヤモヤは見え隠れした。昨年12月に続く交渉でも保留した。争点は、増額分を出来高払いでカバーしたい球団と、年俸で保証してほしい平野とのギャップだ。

 「出来高ではなく、しっかりした年俸をいただきたいという主張は変わらずしました。評価を持ち越すのではなく、その年に評価してほしいです」

 出来高払いについて前回は「信用されていない感じがする」と不満の色を示した。期待度ではなく、前年残した成績をシンプルに年俸に反映させてほしいという主張は曲げない。1月中にサインする希望は持つが、自費キャンプ突入の可能性も出てきた。

 統一球に苦しみながらリーグ5位の打率2割9分5厘。3割5分打った前年から数字は落としたが、二塁手でベストナイン、ゴールデングラブ(GG)賞を2年連続受賞。一方で外野でも先発を含む67試合に出場し、数字に表れにくい戦略面でも大きく貢献した。二塁を毎日のように若手に「譲る」リスクも負う。

 次回日程は未定だが「しっかり練習したいので、次は代理人交渉も考えています」と腰を据えた徹底抗戦の構えも見せた。代理人を立てればオリックス時代の06年オフ以来2度目。できる限り自ら交渉したい意思を持つ一方、練習が最優先だけに苦悩が深い。

 異例のケースが混迷度に拍車をかけている。交渉役の球団本部長が1月1日付で高野栄一氏に交代。複雑かつ高額をめぐる交渉だけに、平野も慎重にならざるを得ない。

 「交渉する方が前回と変わったのでもう1度、自分の主張と来年頑張れる金額を伝えたかった。いい話し合いはできた。思いは伝わっていると思うので、次回は押せると信じたい。評価はしていただいている。怒ってはいない」

 先日、トークショーで同席した和田監督から早期決着をすすめられたが、この日は「納得して押したい。心配してくださる人が多いので申し訳ないですが…」と苦笑い。自費キャンプも辞さない姿勢で、プロの意地を貫く。【柏原誠】