やじってください!

 ソフトバンク松中信彦外野手(38)が28日、自主トレ先のグアムから帰国。その後、契約交渉に臨み、1年契約で現状維持の2億円プラス出来高で更改した。昨季はファンの痛烈なやじが自分の力になったと力説。逆風を吹き飛ばし、来季には2000安打を達成するとあらためて誓った。(金額は推定)

 「松中~、やめちまえ~」。汚いやじも、松中にとっては聞き心地がいいのかもしれない。こんがり日焼けした顔で契約更改を済ませた04年の3冠王は、ファンに思わぬ“要求”をした。今年もやじ大歓迎という。批判をパワーに変え、ホークスのために戦い抜く。

 「昨年は限界説が出ている中、いい意味で発奮材料にしてやれた。それで日本一になれた。今年の自分に期待しているし、楽しみは多いですよ」

 昨年は打率3割8厘、12本塁打。9月に右膝を骨折したが、復活のシーズンとも言える活躍だった。開幕当初の1本足からすり足打法へ変え、CSでは代打満塁弾を放った。長打力と勝負強さ。強烈な輝きを放ってチームを日本一へ押し上げた。その源となったのは痛烈なやじ。「まあみなさん(メディア)やファンからも聞こえますから」。導火線に火を付け、練習の鬼になった。「終わるんじゃないかと思われていたのを覆したのは自信になった」。

 自主トレで右膝は強いダッシュにもびくともせず、フリー打撃も行った。「いい形でキャンプに入れる。競争は激しいけど開幕スタメンでと思っている」と余裕の発言も織り交ぜた。定位置どりに必死だった昨季の経験から自己中心的なやり方を貫くことも予告した。

 「以前は4番で活躍して日本一と思っていたけど、去年から野球観が変わった。本多、松田、内川。彼らにチームは任せます。僕は残りの野球人生、1試合でも多く出て活躍したい。それがチームのためになると思う。少年に戻った気持ちでやります」

 わがままと誤解されても構わない。それがチームのためになると信じてやる。残り2本となった通算350本塁打の先には2000安打が控える。あと269安打。「それは今年どれだけ打てるかで近づける」。湧き水のごとくあふれる言葉の数々が、松中復活の予兆だ。【押谷謙爾】