<東都大学野球:東洋大5-1亜大>◇第2週初日◇13日◇神宮

 今秋ドラフトの目玉左腕、東洋大・藤岡貴裕投手(4年=桐生一)が、開幕カードの亜大戦で4安打15奪三振1失点(自責1)と好発進した。1回に、自己最速を1キロ更新する151キロをマーク。来秋ドラフト候補の東浜巨(なお)投手(3年=沖縄尚学)との投手戦を制し、5-1で先勝した。ドラフトイヤーの公式戦初戦に、国内12球団38人のスカウトが“藤岡詣で”に訪れた。東浜は6回12三振を奪ったが、4失点で降板。駒大は9-7で青学大を下した。

 ドラフトイヤーを迎えた東洋大・藤岡の春は、ド派手な奪三振ショーで幕を開けた。圧巻だったのは2回。内角高めの直球で、亜大の4番青柳に左越えソロをくらった直後だ。「1点はしょうがない。しっかり立て直そうと思いました」。捕手の岡に左手で“ごめん”と謝るポーズを見せると、そこからギアチェンジ。続く5番打者を147キロの直球で見逃し三振に仕留めると、6、7番も空振り三振に切った。

 1回には自己最速を1キロ更新する151キロをマーク。5回2死からは、150キロで見逃し三振を取った。どよめくスタンドをよそに「3つ目のアウトが三振だと、仲間も乗ってくる。狙っていきました」と涼しい顔だ。15奪三振は、リーグ戦初完投だった09年秋の国学院大戦に並ぶ自己最多タイ。9回中、最後の打者が三振の回が6回を占めた。

 目を引く速球と三振の陰に隠れていたが、昨年より格段によくなったのが制球力だ。136球を投げて四死球はなし。「四球は失点につながる。変化球の精度も上げたので、去年以上に良くなってるのを見せたかった」と自信を見せる。

 冬場に100~400メートルの短距離走を繰り返し、股関節のトレーニングを取り入れたことで下半身の安定感が増した。高橋昭雄監督(62)は「まだ球が高いよ。理想とするところにはとても足りないね」と厳しい言葉を並べたが、裏腹に声と表情はうれしそうだった。

 同時にキレもよくなった。このオフ、東洋大で自主トレしていた先輩左腕の乾(日本ハム3位)は「藤岡とキャッチボールするの怖いんですよ。目の前に来ても球の高さが変わらなくて、グンと伸びるんで」と笑っていた。この日も、145キロ前後の直球でも空振りが取れた。また、昨年までほとんど投げなかったフォークも公式戦解禁した。

 3月11日の東日本大震災では、地元の群馬県が被災。埼玉・川越市で寮住まいの藤岡は、食事メニューが減った程度で大きな影響はなかった。だが「募金とか、できることはしています」と地道に支援している。

 チーム開幕カードで、東都現役最多勝利(18勝)の亜大・東浜との投げ合いを制して17勝目。「楽しみでした。プレッシャーがいい方向にいった。今年は自分が貢献して優勝を狙います」。リーグ戦、春秋の全国大会と4冠を狙う藤岡に、死角はない。【鎌田良美】