<東都大学野球:東洋大2-1中大>◇第5週最終日◇6日◇神宮

 今秋ドラフト1位候補の東洋大・藤岡貴裕投手(4年=桐生一)が通算20勝を挙げた。中大2回戦に中1日で先発し、10回を10安打10三振で1失点。10回裏1死三塁から1番小田裕也外野手(4年=九州学院)が中前打を放ち、サヨナラ勝ちした。藤岡はリーグ戦自己最多の159球で完投し、今季4勝0敗。

 藤岡が苦しみ抜いて節目の20勝に到達した。リーグでは先輩にあたる大場翔太(東洋大、現ソフトバンク)が07年春に達成して以来。現役でも亜大・東浜巨投手(3年=沖縄尚学)の19勝を上回り、トップとなった。甲子園を沸かせた左腕との対決で大台に乗せ「(20勝は)うれしいですね。監督さんに『1年生に負けるな』と言われていました。島袋に勝ててうれしい」と顔をくしゃくしゃにした。

 リーグ戦で初めて2ケタ安打を浴びた。2回に自己最速を1キロ更新する153キロをマークしたが、調子は「最悪」。そんな状態でも簡単には点を与えない。2回1死二、三塁、1ボール1ストライク。3球目に相手がスクイズを仕掛けると、151キロの直球で外した。6回1死一、三塁で1ストライクからの2球目、再び直球でスクイズを外した。「横目でランナーが走っているのが見えた。(サインが)変化球でも外しますよ」。踏み出してから間の長い投球フォームだから、打者の動きと走者の動きを投げながら把握できる。

 得点の芽を摘む抜群の嗅覚を、オリックス古屋編成部国内グループ長は「野球勘がすごい」とたたえた。2回無死一、二塁からの三塁側への絶妙なバントも、すばやくマウンドから駆け下りる処理。完投から中1日と、疲労が残る中でフィールディングの良さも見せつけた。「いまさら評価がどうこうという選手ではないでしょう。馬力も排気力もある」と同氏は続けた。

 高橋昭雄監督(62)は「あれだけ打たれて抑えて。奇跡ですよ。大したもんだ」と独特の言い回しで、藤岡に最大限の評価を与えた。チームは開幕6連勝で、17日からの青学大戦で連勝すれば2季ぶり16度目の優勝が決まる。今季先発4度、抑え2度と6戦すべてに登板する藤岡は「優勝できなければ意味はないですから」と次戦も連投を辞さない覚悟だ。【清水智彦】