<全日本大学野球選手権:東洋大3-1慶大>◇12日◇決勝◇神宮

 東洋大(東都)が慶大(東京6大学)に延長10回、サヨナラ勝ちして2年連続4度目の頂点に立った。2連覇は97、98年の近大以来、史上5校目(7度目)。3連投の藤岡貴裕投手(4年=桐生一)が、左足をつりながらも164球で完投し、最高殊勲選手賞(MVP)と最優秀投手賞をダブル受賞した。2年連続MVPは史上初。10回無死一塁から、1番小田裕也外野手(4年=九州学院)がサヨナラ2ランを放った。慶大は、24年ぶりの優勝にあと1歩届かなかった。

 10回、すでに140球以上を投げた藤岡の左足は限界に達していた。つったふくらはぎを押さえ、屈伸を繰り返して迎えた2死。「すごくつらかったけど、感覚が変わるのは嫌でした」。治療を断り、顔をしかめながら、140キロの直球で慶大・宮本真を見逃し三振に取った。気力だった。

 その裏。「この回でどうにかしよう!」。円陣で高橋昭雄監督(63)が放った言葉に小田が応えた。足のマッサージ中だった藤岡は歓喜の輪に間に合わなかったが「最上級生として連覇できて、本当に、うれしいです」。マイクに向かうと顔を赤らめ、声を詰まらせて喜びを表現した。

 大会4試合で471球。リーグ戦から、15試合すべてに登板して1425球を投げた。中1日で東海大を完封した昨年の決勝とは違い「3連投は本当にきつかった」。そんな中でも12奪三振。4試合通算では48Kで、大会記録にあと1。史上初の2年連続MVPにふさわしい活躍だった。

 小学生のころ、3番を任された群馬県大会初戦で、最終回に敬遠されて負け、「勝負してほしかった」と泣いて悔しがった。打者の気持ちも痛いくらい分かる。注目された慶大・伊藤とのドラフト1位候補対決では、正面からぶつかって無安打に抑え込んだ。

 出場できなかった東海大・菅野、明大・野村の分まで、しっかり大会を盛り上げた。「これで世代NO・1?」との問いに「いえいえ、そんな。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)していきたいです」。最後は笑顔で、いつもの謙虚なエースに戻っていた。【鎌田良美】