国際色豊かな2人の左腕が、ドラフト戦線を熱くする。全日本大学野球連盟と日本高野連は9日、プロ入り希望選手に提出を義務付ける「プロ野球志望届」提出期間を締め切り、計164人(大学70人、高校94人)が提出した。東都大学リーグ2部の日大・戸根千明投手(4年=石見智翠館)は、フィリピン人の母を持つ最速147キロ左腕。関甲新学生リーグ最多タイの28勝(23敗)を誇る平成国際大・佐野泰雄投手(4年=和光)は、タイ人の母を持つ最速149キロ左腕だ。ともに23日のドラフト会議で上位候補に挙がり、各球団から熱視線を浴びている。

 栃木・小山市にある白鴎大球場で、平成国際大・佐野が1つの節目にたどり着いた。東京から約80キロ離れたネット裏に編成トップを含む6球団13人が集まった7日の常磐大戦で、8回無安打無失点に抑え、リーグ最多タイとなる通算28勝に到達。177センチ、81キロの強い体で、4年間ケガなく投げ続けた勲章だ。

 タイ・バンコクで生まれ、タイ人の母ウェウワンさん(48)とともに2歳で埼玉に渡った異色左腕。中3の時に「もう当分行けないと思って」と、タイ旅行に行って以来、日本で野球一筋に打ち込んだ。和光高3年夏は3回戦で敗退。大学で結果を残し「野球を始めた時からプロになりたかった」と、夢をかなえるチャンスをつかんだ。

 今秋、自己最速を3キロ更新する149キロをマーク。右打者の内角へクロスに投げ込む直球が魅力で、同じ軌道から曲がりの小さいカットボールで空振りを奪う。カーブは元西武の工藤公康氏(日刊スポーツ評論家)、スライダーは元西武石井一久氏、チェンジアップは巨人杉内を参考。時代を彩った左腕をミックスすることを理想に掲げる。

 “地元”西武やオリックスなどが熱視線を送るなど、既に9球団から調査書が届いた。視察した日本ハム山田GMは「直球は140キロ台で、制球もまとまっている。左投手は貴重ですから、ドラフト上位候補になる」と高評価。80年の歴史を誇るプロ野球界でも極めて異例となる、タイ出身投手誕生が目前に迫っている。【前田祐輔】

 ◆佐野泰雄(さの・やすお)1993年(平5)1月18日、タイ・バンコク生まれ。2歳で来日し、埼玉・和光市で小3から野球を始める。和光高から平成国際大に入学し、1年春からリーグ戦に登板。今春は7勝を挙げ、最多勝とベストナインを獲得。通算28勝23敗。胸囲101センチで背筋力210キロ。家族は両親、姉、妹。177センチ、81キロ。左投げ左打ち。