2010年10月21日
ドラフト注目選手・田中太一(大分工)
甲子園にも出場、スカウト陣が能力を高く評価する大分工・田中投手
ドラフトまで1カ月を切った10月某日。神宮球場で知り合いのスカウト氏に「今年の高校生で一番印象に残ったピッチャーは?」という質問をしてみた。するとそのスカウト氏はプロ志望届を提出した高校生選手のリストを引っ張り出すと、ある選手を指差した。
「この子。甲子園では良くなかったんだけど、予選で見たときはすごかったんだよ」。スカウト氏が指差したのは大分工の田中太一投手。今夏の甲子園に出場。初戦で延長戦の末、延岡学園にサヨナラ負けした。直球は145キロをマークしたものの、12安打を打たれ5失点。本調子にはほど遠い内容だった。
スカウト氏が「すごかった」と話した試合は7月20日の大分大会初戦の別府羽室台戦。17三振を奪い1安打完封した。最速は148キロをマーク。集まった10球団20人以上のスカウトをアっと驚かせた。
「まだ高校生で体も細い。1試合、すごいピッチングをしちゃうとダメージが大きいんだよ」。スカウト氏の言葉を裏返せば、プロで体をしっかり鍛えれば、常に「すごかった」というピッチングが出来るということだ。
このスカウト氏のほかにも田中に一目惚れしてしまった別の球団のスカウトがいた。10日の日刊スポーツに「中日が田中を上位候補にリストアップ」という記事が掲載された。その中で中田宗男スカウト部長は「ひじや肩の使い方は抜群。指にかかった直球は球が浮き上がってくるように伸びる。個人的にはどうしてもほしいピッチャー」とコメントしている。中田部長も7月20日の試合を観ていたという。
140キロ台後半のストレートに「太一カーブ」と呼ばれる縦に鋭く落ちる変化球が武器。この夏、たった1試合で多くのスカウトのハートをつかんだ。上位指名はあるのか、ドラフト会議が待ち遠しい。【福田豊】
◆田中太一(たなか・たいち)1993年(平5)2月27日生まれ、大分市出身。小2で野球を始め、中学時代は「大分リトルシニア」に所属。3年春夏と全国大会に出場した。大分工では2年春からエース。3年夏、甲子園に出場。最速は149キロ。好きな球団は楽天。179センチ、77キロ。右投げ右打ち。血液型はO。
- 小関順二(こせき・じゅんじ)
- 1952年生まれ、神奈川県出身。日大芸術学部卒。会社勤めのかたわら「ドラフト会議倶楽部」を主宰。本番のドラフト会議直前に「模擬ドラフト会議」を開催し注目される。その後スポーツライターに転身。アマチュア野球を中心に年間200試合以上を生観戦。右手にペン、左手にストップウォッチを持って選手の動きに目を光らせる。著書に「プロ野球問題だらけの12球団」ほか多数。家族は夫人と1女。
- 矢島彩(やじま・あや)
- 1984年生まれ、神奈川県出身。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代にアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。大学卒業後フリーライターに。雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)などに執筆中。好きな食べ物は広島風お好み焼きと焼き鳥(ただしお酒は飲めません)。趣味は水泳。
- 福田豊(ふくだ・ゆたか)
- 1962年生まれ、静岡県出身。85年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球、連盟などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在は毎朝6時半出社で「ニッカンスポーツ・コム」の編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。「ふくださん」の名前でツイート中。
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