球団売却問題で混迷中の横浜が、1番人気獲得の勝負に出る。25日、横浜市内の球団事務所で行われた編成会議で、最大7球団からトップ指名される可能性がある東洋大・藤岡貴裕投手(4年=桐生一)を1位指名することを決定。球団売却問題が最終局面を迎える最中のドラフト会議。球団はアマNO・1の即戦力左腕にチームの未来を託す決断を下した。また、藤岡はこの日、今季自己最多の13奪三振の力投で、大学のラスト登板を終えた。

 混乱の中、競合覚悟で決断した。編成会議を終えた堀井恒雄編成部専任部長は、1位指名選手を問われると、左腕を振るアクションで藤岡指名を公表した。「うちのスターターは左が欲しい。一番いい評価。先発で完投能力があり、三振をとれる球がある」。今季、先発左腕の勝ち星は5人でわずか6。4年連続最下位から脱却するには、左の柱が必要不可欠といえる。

 ここ数年は、事前に1位指名を公表してこなかった。今年は隠さなかった理由について、堀井部長は「今までと違った方法でやったら、うまくいくかもしれない。隠しても結局抽選になるんだから」と話した。過去競合の1位指名は5勝16敗と、くじ運はよくない。昨季も大石(西武)を外した。藤岡はロッテ、オリックス、楽天などが候補に挙げており、4球団からは指名されそう。最終的に7球団まで増える可能性も秘めている。だが、あえて公表して勝負に出る。

 球団売却騒動の真っただ中でドラフト会議を迎える。親会社TBSホールディングス(HD)からゲームサイト「Mobage(モバゲー)」の運営会社ディー・エヌ・エー(DeNA)への球団譲渡は、ドラフト翌日の28日に正式発表される。たとえ順調でも12月1日のオーナー会議で承認されるまで、球団は不安定な状態に置かれる。この間に、指名した選手との交渉を進めなければならない。

 当然ながら指名選手から将来への不安を訴えられる可能性は高い。これについて佐藤球団常務は「(球団売却は)決して悪いことをしているわけではない。DeNAが球団を保有することを前提として、(選手が)戦力としてぜひ必要であることを伝えていくしかない」と話した。誠心誠意、現状を説明して不安を拭い去るしかない。

 休養中の尾花監督が会議を欠席する場合、加地球団社長がクジを引くことになりそうだ。交渉権を獲得した場合、同社長はすぐさま指名あいさつに向かう予定。昨年から続く身売り騒動。4年連続最下位…散々だった球団に、藤岡の交渉権獲得という「幸運」がやってくるだろうか。