日本ハムが予告通り、25日に行われたドラフト会議で花巻東・大谷翔平投手(3年)の単独での強行指名を敢行した。他球団との競合も想定していたが、一本釣りに成功。大谷の固い意志を覆すため、栗山英樹監督(51)は「花巻まで何度でも足を運ぶ」と長期戦を覚悟しながらも意欲を見せた。担当スカウトを編成トップの山田正雄ゼネラルマネジャー(GM=68)ただ1人とする異例のシフトで、160キロ右腕との難航必至の交渉に乗り出すことになった。

 本当に、真っ向から指名した。日本ハムが2年連続でドラフトの主役になった。12球団の最後で1位指名したのは、それまで1度も名前が出なかった超目玉の「大谷翔平」だった。花巻東のチームカラーと同じパープルのネクタイを締めて挑んだ栗山監督は襟を正して、直後の記者会見に臨んだ。第一声で「えぇ、まあ…。あの…」と言葉に詰まりながら、神妙な表情を崩すことなく18歳右腕にメッセージを送った。

 栗山監督

 大谷君からすれば「何すんだ」っていうこともあるだろうし、それに対しては、正直に本当に申し訳ない。とりあえず(大谷サイドに)話を聞いてもらえたら、うれしい。

 責任の重さを、あらためて痛感していた。大谷のメジャー希望の表明を受け、ドラフト2日前の23日に山田GMが、強行指名を明言。その意思を尊重して、指名を見送る姿勢を示す球団が大勢を占めたが、公然と戦略も明かし、踏み切った。明日27日開幕の日本シリーズを控え、監督として初のドラフト。「昨日から大谷君と聞いて、考えていると、静かには見ていられなかった」と興奮を隠せなかったが、難航しそうな行く末へ目を向けた。「できるだけ早く花巻に行きたい。とにかく花巻まで何度でも足を運ぶ」と覚悟を見せた。

 球団も、異例のシフトで大谷と向き合っていくことになった。指名直後に、交渉にあたる担当スカウトに山田GMを起用することを決定。通常なら9月に面談した大渕スカウトディレクター、チェックしてきた今成スカウトを配置するが、編成の最高責任者を据えることになった。メジャー願望を翻意させるわずかなチャンスにかける、強い意思表示。栗山監督は「できればみんなで一緒にやっていきたいという思いを伝えたい。受けてほしい」と、日本ハムの総意を代弁した。

 昨年の菅野に続き、またも“難敵”に挑戦することになる。栗山監督は「才能を持った選手。人としても素晴らしい。これから大きく野球界を引っ張っていく存在になって欲しい」と超難関の金の卵へ、呼びかけた。片思いを成就させるため、全力投球する勝負の冬を迎える。【高山通史】