日本ハムがドラフト1位で強行指名した花巻東・大谷翔平投手(18)とサプライズ対面を果たした。2日に岩手・奥州市内の自宅を、両親への指名あいさつで訪問。予定外の大谷本人も加わり、指名の経緯などを説明して理解を求めた。あらためて強いメジャー志向を伝えられたが、栗山監督のメッセージ入りサインボールをプレゼントするなど初接触に成功。翻意には難航必至だが、次回の話し合いの確約は取り付け、わずかな可能性は見いだした。

 思い焦がれる160キロ右腕が突如、目の前に現れた。百戦錬磨の日本ハム山田GMが「ビックリした」と仰天した。午後5時50分。大谷家の玄関を開け、両親への指名あいさつ場所のリビングへ向かうと、大谷が待っていた。その約40分前に帰宅しており、出迎えて、そのまま同席した。同GMが「はじめまして」と声を掛けてから約50分間の初対面、初のアピール・チャンスが到来した。

 少しでも早く決着をつけたい大谷の両親の意向もあり、日本シリーズ中に実現した。球団はまず疑念を解くことからスタート。指名を決断した経緯、理由を説明した。メジャー希望でも、簡単にはあきらめられないほど最高の評価をしていることなどを伝えた。編成トップながら担当スカウトに就任した同GMと大渕スカウトディレクターで、思いを届けた。自宅まで足を運んでの異例の「家庭訪問」も含め、言動で精いっぱいの誠意を示した。

 本人も含めて大谷側は取材対応しなかったが、山田GMは状況を描写して明かした。「(大谷は)複雑な表情をしていた。我々の質問には快く答えてくれました」。大谷とのヒアリングでは事前調査などでも把握していたメジャーへの強い思いをこの日、再確認した。同GMによれば、大谷は固い決意を語ったという。高校生1位クラスの選手で、日本球界を経ずに本場へと挑戦する第1号として、新たな道を切り開く覚悟があった。「メジャーで長くやりたい。そのためにはこの時期にメジャーへ行くことが良い。パイオニアになりたい」。

 そんな心を砕くために、サプライズ・プレゼントを1つだけ準備した。贈り主は、取材を受けたことがあり旧知の栗山監督。日本シリーズで多忙で出向くことができず、座右の銘が含まれた直筆メッセージ入りサインボールを預け、手渡した。「大谷君へ

 夢は正夢

 誰も歩いたことのない大谷の道をつくろう」。それを目にした時だけは、うれしそうだったという。

 花巻東へのあいさつは10月26日に終えており、大谷側へ2度目の接触は実現。本人とも思いがけずに会えたが、難航必至の情勢は大きく変わらなかった。山田GMは「分からないですね」と表情を曇らせた。ただ本人が同席は未定だが再度、両親とは話し合いの場を持つ約束は取り付けた。日程と状況が整えば、栗山監督の出馬準備もある。細くつながった赤い糸は、希望の光にする。【高山通史】