日本ハムが、ドラフト1位指名した花巻東・大谷翔平投手(3年)に規格外の育成プランを提示することが15日、明らかになった。メジャー希望で交渉が難航中だが、明日17日に岩手・奥州市内で本人同席で行う入団交渉に向け秘策を用意。投手として最速160キロ、打者としては高校通算56本塁打をマーク。将来的に「エース兼任4番」として1年目から起用し、育てていくという、日米野球界の既成概念を打ち破るサプライズ条件で風向きを一気に変えにいく。

 日本ハムが、大谷のメジャー願望を揺さぶる可能性がある、受け入れ態勢を温めていた。本人同席では2度目となる17日の交渉で、入団が実現した際には「エース兼4番」として育てていく方針を伝える。栗山英樹監督(51)ら球団一致で固めたアイデアを提案することになった。

 まさに規格外の育成プランといえる。投げては最速160キロ右腕、打っては高校通算56本塁打。ドラフト前から、投手、野手のどちらで育成するか、日米の各球団間で意見が割れていた。日本ハムは指名前から両面の才能が極めて高レベルで、サプライズな青写真を描いていた。

 成功へ導く自信があるからこそ、既成概念を打ち破る入団条件をプレゼンテーションする。球団はベースボール・オペレーション・システム(通称BOS)を駆使して近年、独自のチーム強化指針を構築。それをもとに高校生の逸材を成長させてきた実績がある。大谷も憧れるレンジャーズ・ダルビッシュや4番中田など、注目のドラフト1位を大成させてきた。

 投打両面のトップ級を育成したプロセスを熟知していることが、本気で夢プランを提案できる根拠だ。栗山監督をはじめフロント陣は、公の場で大谷の評価を投手か野手かを明確にしなかった理由が、この一大プロジェクトにある。今月下旬にも交渉に出馬する意向の栗山監督は「高校野球でも、プロでも、4番でエース。野球界の夢」などと球団側へ訴え、実現を目指しているという。

 メジャー一直線という大谷の心を動かす材料になりそうだ。米球界はダルビッシュに匹敵する投手という評価。しかしマイナーリーグの育成システムでは投手と野手を完全に分業しているため、兼任は許されない。「打者大谷」の才能は、埋もれてしまう可能性が高い。パ・リーグはDH制のため、登板機会のない試合では「打者大谷」として負担を軽減して起用できる好条件も加味。育成に必須な実戦経験を投打両面で積ませることが可能だけに、球団は全精力を挙げて説得する。

 大谷はプロでは投手希望とされているが、周囲の関係者によれば、両面で可能性を求めたいのが本心だという。その願いをかなえる土台が整っているのは、現状ではメジャーではなく日本ハムだけだ。

 プロでは成功例はない「エース兼4番」。「パイオニアになりたい」と高い志を持つ大谷を揺さぶるには、格好の条件になる。栗山監督は2日の指名あいさつの際に、山田GMへメッセージ入りのボールを託した。「誰も歩いたことのない大谷の道をつくろう」。大谷が日本球界のパイオニアとなれる道は、日本ハムには開けている。