<運命の日を待つ(中):高校生編>◆高橋光成投手(前橋育英)

 日本から4400キロ以上離れたタイでも、熱い視線は注がれていた。高橋は9月5日、U18アジア選手権の台湾戦に先発。バンコクから車で約1時間の球場に3球団が訪れ、西武は最も多い3人態勢で視察した。渡辺シニアディレクターが「やはり1球1球のポテンシャルが高い。総合的に見て上で指名される選手ですね」と評価した約1カ月半後、西武では異例のドラフト1位指名が発表された。

 高橋は今夏の群馬大会3回戦で敗れた後も週に何度かチームの練習に参加し、打撃投手などを行っている。1位指名の報道を知った第一声は、「びっくりです」だった。「甲子園に出られなくて評価が下がったかも、と思っていたので。でも、ジャパンで投げて少しだけ自信がつきました。評価していただいてうれしいです」と、素直な気持ちを口にした。

 好感触をつかんだ試合と球団の評価が一致した。台湾戦は5回で降板したが、2回には自己最速タイの148キロを計測した。1月に右手親指を骨折し、なかなか状態が上がらなかったが、国際舞台で感覚が戻った。直球が走ると自慢のフォークも生きた。「ボールの威力が増して自信がついてきました。ドラ1でいきたいと思うようになりました」。昨夏の甲子園優勝右腕は、1位でのプロ入りをはっきりと描いた。

 去年のドラフトでは西武森、楽天松井裕らが高卒で1位指名された。「今までドラフトにはあまり興味がなかったんですが、去年は知っている人がたくさんいたので興奮しました」。昨夏のU18W杯でともに戦った先輩たちがまぶしく見えたが、今、高橋にも12球団から調査書が届いている。競合してくる球団はあるのか。注目のドラフトが迫る。【和田美保】

 ◆高橋光成(たかはし・こうな)1997年(平9)2月3日生まれ。群馬・沼田市出身。小1から野球を始め、中学から投手に専念。前橋育英では1年秋からエース。2年夏に甲子園1回戦(岩国商戦)で9者連続奪三振をマークし、全国優勝。2、3年時に高校日本代表。家族は両親と姉、弟、祖父母。188センチ、90キロ。右投げ右打ち。