和製大砲になる!

 楽天ドラフト7位の日本製紙石巻(宮城)伊東亮大(りょうた)内野手(25=武蔵大)が12日、宮城・石巻市内の日本製紙石巻工場で指名あいさつを受け、入団交渉も行った。契約金4000万円、年俸800万円(いずれも推定)で契約合意。昨年、DHで社会人ベストナインを獲得した左の強打者は、近年、日本人選手の長打力に欠ける楽天の大きな戦力と期待される。

 長距離砲の自覚十分だった。日本製紙石巻の伊東が、大きな体で目標を掲げた。「求められているのは長打力。二塁打、三塁打、ホームランを打てるように」。身長194センチ。楽天と契約合意に達し、オリックス、ヤクルトで活躍し、「デカ」の愛称で親しまれた高橋智と並ぶ日本人最長身野手が誕生した。

 昨年は楽天2軍、今年はソフトバンク2軍とのオープン戦でプロの投じた140キロ台後半の速球をスタンドにたたき込み、楽天スカウトの目に留まった。社会人になって本格的に始めたウエートトレ効果で筋力もアップ。準優勝した3月のJABA東京大会では3試合連続アーチをかけた。夏に初めて社会人の日本代表入りして、遠くへ球を飛ばすスイングを覚え、今年は12本塁打。交渉に同席した楽天上岡スカウトは「山崎武司以来、日本人の大砲がいない。クリーンアップを任せられる選手に」と、今季12球団最少の78本塁打に終わった楽天を変える打撃に期待した。

 ドラフト指名後、伊東は悩んでいた。投手だった弟昂大(こうた)さん(23)が、盛岡大付(岩手)から09年ドラフト5位で広島入りして昨年戦力外になった。プロの厳しさを垣間見た。指名後、弟と食事をして「頑張ってみれば」と言われた。社会人日本選手権後も電話で連絡を取り「何を迷っているんだ。(プロに)行け」と背中を押され、決意したという。

 東日本大震災から約1年たった12年春に日本製紙石巻入社。震災当時のチームの苦労を聞き「寂しいというか悲しい気持ち」と振り返り「石巻、東北のためにも頑張る」と言った。首都大学リーグの武蔵大時代に対戦した、東海大・菅野(現巨人)との交流戦での再戦も1つの楽しみ。弟と被災地への思いを心に秘め、伊東は1軍入りを目指す。【久野朗】

 ◆伊東亮大(いとう・りょうた)1989年(平元)7月27日、神奈川県大和市生まれ。上和田小1年の時、大和隼球団で野球を始め投手。上和田中では横浜瀬谷ボーイズに所属。桐光学園では1年秋から一塁手。3年夏に甲子園出場し、三塁コーチ。武蔵大では3年春にベストナイン。日本製紙石巻入社3年目。昨年の都市対抗は4番で8強入り。194センチ、92キロ。左投げ左打ち。家族は母と兄、弟と妹。

 ◆日本人長身野手

 194センチの高橋智が歴代最長身とされ、プロ入り2年目の86年秋に投手から打者に転向した。高橋智に並んだ伊東は桐光学園入学時に「187センチあった」と話し、2つ上の兄翔大さん(27)は183センチ、弟昂大さんも186センチと長身家系。今季の現役でもっとも高いのは、投手登録ながら野手との「二刀流」でプレーする日本ハム大谷の193センチ。