楽天岩隈久志投手(27)が26日、Kスタ宮城内の球団事務所で契約交渉を行い、球団初の3年契約で出来高含め総額11億円でサインした。年俸ベースでは投手史上最も増額となる1億9000万円増で3億円に到達。一気にパ・リーグ最高年俸投手に躍り出た。投手3冠にMVP、沢村賞など先発投手のタイトルを独占したエースは、まさに「ジャパンドリームですね」と笑った。(金額は推定)

 人生最良の年を締めくくるにふさわしい金額が待っていた。岩隈は「サインしました。最大限の評価をしていただきました」と、短い言葉に喜びを込めた。投手3冠、MVP、沢村賞、ベストナイン。そのほか関連する表彰を含めれば両手に余るほどたたえられた。活躍の分だけ稼ぐのがプロの世界。完ぺきな成績に応える額は倍増をはるかに超える3億の大台しかなかった。

 今オフはまさに引っ張りだこだった。表彰式にテレビ、雑誌の取材。秋季練習を終えた11月下旬から平日は仙台、週末は東京という生活が続いた。慣れない忙しさから直後に風邪をひき、23日にも41度の高熱を出した。「忙しかったですからね。疲れが出たのかもしれません。でもインフルエンザは大丈夫でしたよ」。結局、欠席したのは25日の日本プロスポーツ大賞の表彰式だけ。シーズンとは違う疲労と戦いながら、感謝の言葉を繰り返してきた。

 球団初の3年契約は、チームのために戦う姿勢の表れだ。順調にいけば10年のオフには国内フリーエージェント(FA)の資格を獲得する。それでも球団側から提示された条件の中から最も長い3年契約を選んだ。「優勝できるように責任を持って取り組みたい。来年は選手会長にもなりますし」。あくまでチームのエースとして頂点を目指すことを選択した。米田球団代表も「2年後には国内、3年後には海外FAになる。そういうことも考慮しての3年契約です」と説明した。

 大満足の契約更改で今季を締めくくった岩隈の思いは、すでに3月のWBCに飛んでいる。「まずはWBCを目標にします。向上心を持って頑張りたい」。今夏の北京五輪で外れた日本代表への思いを、来春にぶつける意気込みに満ちていた。会見後、いたずらっぽく「ジャパンドリームですね」と話し、笑いを誘った。WBC連覇、チームの優勝、そして今季に劣らない自らの成績。エースがかなえるべき夢は、まだまだ残っている。【小松正明】