日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏が先日、WBC準決勝から決戦の地を米国に移す侍ジャパンの「隠れた課題」を案じていた。「守備に自信がある人でもアメリカでは不安、怖さが出てくるものだからね…」。自身は13年WBCを経験し、準決勝はジャイアンツの本拠地AT&Tパーク(現オラクルパーク)でプエルトリコと戦った。日本と米国のグラウンドの違いには相当気を使ったそうだ。

「自分はサンフランシスコでしか守っていない。今回のマイアミのグラウンドがどんな感じかは分からないけど」。鳥谷氏はそう前置きした上で、事前に違いを知っておく重要性を強調した。「少なくとも日本の球場とは全然違う。芝や土の硬さが違えば、ボールの転がり方が変わってくる。湿気が違えば、ボールの滑り方も気にしないといけない」。WBC経験者の言葉には重みがある。

侍ジャパンの直近2大会はともに準決勝で泣いている。17年米国戦は日本屈指の名手でもある二塁菊池涼介の失策が引き金となり、4回に先制点を献上。同点の8回1死二、三塁では前進守備を敷いた三塁松田宣浩が正面のゴロをファンブルし、三塁走者の本塁生還を許した(記録は三ゴロ)。重盗失敗の印象が強い13年プエルトリコ戦も実は2点ビハインドの8回、一塁名手の中田翔が失策を喫している。慣れない異国のグラウンドでの守備はそれだけ難しい、ということだ。

今大会の決戦会場はマーリンズ本拠地のローンデポパーク。投手有利の「ピッチャーズパーク」として知られている。1点の価値が格段に増すであろう準決勝メキシコ戦で、守りのミスは命取りになりかねない。限りなく天然芝に近いとされる人工芝の実態は? 土の硬さは? 開閉式屋根が開くか開かないかで湿気はどれぐらい変わるのか? 20日の準決勝までに同球場で練習できるのは、前日19日の1日しかない。丁寧な確認作業が必要になりそうだ。【佐井陽介】