「考えて、考えて、考えろ」。ヤクルト青木宣親外野手(41)がWBC準決勝でサヨナラ打を放った侍ジャパン村上宗隆内野手に、ルーキー時代から説き続けてきた教えだ。

青木がメジャーからヤクルトに戻った18年、村上が入団。頭部に死球を受けファーム調整中だった青木が声をかけそのオフ、村上を米ロサンゼルスの自主トレに呼んだ。師弟関係はそこから続く。

「うまくいかないとき『メンタルの問題』と言う人は、そこで考えることを止めた人。プロなんだから、なぜ打てないのか、なぜケガをしたのか、逆になぜ打てたのか。それを自分で説明できないといけない。『メンタルのせい』と逃げる人が多いけど、ロジカルにならないといけない」

この考え方を村上に対し「もうずっと言い続けてます」。村上にストレッチの重要性を伝えたのもその一環。打撃や守備、スローイングという野球の練習ばかりをやっていては徐々に体がその形に“固まって”いくという。それをストレッチで毎日、自分本来の体に戻していく。「ケガをするということは、その部分に負担が来ているということ。自分の体を徹底的に知り、考える。『考えすぎ』なんてことはない。もっと深く考えろということ」。

WBCに入り不振が続いたが、それでも村上は考えることを止めなかった。1年目のオフでロサンゼルスに行って以来の米国で、14年ぶりの決勝進出を決める殊勲打を放った。

1次ラウンド・オーストラリア戦前に入れた1本の電話。「打てないのもムネ。逆に言えば大爆発するのもムネ。全部いつも通りのムネだから」。プレッシャーを少しでも取り除いてあげたい一心でかけた言葉だ。出会いから5年。ともに過ごした日々は、この一打につながっていた。【三須一紀】

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