【マイアミ(米フロリダ州)21日(日本時間22日)】二刀流でWBCのドラマが完結した。

侍ジャパン大谷翔平投手(28)が、胴上げ投手で悲願の世界一を成し遂げた。決勝では初めてとなった日米決戦に「3番DH」で出場し、1点差の9回から守護神としてマウンドに上がった。2死から米国主将でエンゼルスの同僚マイク・トラウト外野手(31)とのドリームマッチが最後の最後で実現。空振り三振を奪い、世界一を決めた。漫画のような、これ以上ない最高のシナリオで世界一奪還を果たし、大会MVPにも選出された。

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グラブを、帽子を、思いっきり投げた。力強く拳を握り、両手を広げた。大きく口を広げ、ほえた。歓喜の輪で3回、夜空に舞った。重みを感じながら優勝トロフィーを高く掲げ、天を見上げた。全てが、大谷にとって至福の時だった。世界一。第一声で「夢見ていたところ。本当にうれしい」と素直に言った。

有終の美を自らの手で飾った。9回。泥だらけのユニホーム姿で、ブルペンから登場した。「間違いなく今までの中でベストの瞬間。最終的に最高の形で終わることができて、自分にとっても素晴らしい経験だった」。最後の打者は、過去最強の米国の主将トラウト。「これが最高のシナリオだと思っていた」。エンゼルス同僚との真剣勝負は、渾身(こんしん)のスライダーで空振り三振。野球の神様から用意されたようなストーリーが完結した。

忘れかけていた熱さがこみ上げてきた。高みを目指し、メジャーに挑戦。1年目、「毎日、楽しく野球ができた」と笑顔も満載だった。だがMVPをとってもオールスター選手に選ばれても、どこか物足りなかった。「チームが勝つことが一番の目標」。勝利への貪欲さが年々、増していた。

ワールドシリーズ(WS)は自宅などで観戦するばかり。個人で進化を遂げてもチームで結果がでない。イライラや怒りが明らかに表面化し始めた。大切なはずのバットすらたたきつけ、周囲が凍り付くこともあった。もがく度、感じ方は間違いなく変わっていった。本当の楽しさとは-。

答えが、侍ジャパンにあった。本能の赴くままにプレーできた。決勝戦では、ベンチとブルペンを何度も往復して二刀流を整えた。「自分が打たなくても勝ちさえすればOKという短期決戦。それは特別」。野球の本質が身に染みた。全勝で駆け抜けた初のWBC。「本当にいいチームメートたちと野球ができたのは、今後の野球人生においても、素晴らしい経験になった」。心の底から、思った。

試合前、日本代表で大谷が、米国代表でトラウトが国旗を掲げて行進した。そして、最後の瞬間は2人の直接対決。「こういう経験をもう1回したいと、あらためてそういう気持ちが強くなる」。そして、言った。世界一の選手へ-。「その目標は達成されたわけではないので。1つの通過点として、もっと頑張っていきたい」。次なるゴールはWS制覇。夢の続きが、この先にある。【斎藤庸裕】

【WBC】 侍ジャパンが3大会ぶり世界一! 大谷がトラウト三振斬りでMVP/決勝戦詳細