どうするメジャーリーガー。侍ジャパンの3大会ぶり世界一は、メジャーリーガーの存在抜きには語れない。投手力、打力という単純な戦力にとどまらず、チームの精神的支柱、盛り上げ役も担った。筆頭は、やはりパドレス・ダルビッシュ有投手(36)だった。

記者は宮崎強化合宿初日から取材したが、3日目で変化を感じた。毎朝、外野スタンドから、グラウンドでアップする選手たちをチェックした。ダルビッシュが他の選手たちに積極的に声をかける姿が印象的だった。初日は、若い選手たちが恐縮した様子だったのが、早くも3日目にして自然な感じで会話しているように映った。

そういう空気にダルビッシュがしたのは間違いない。佐々木にスライダーなど、いろんな投手に変化球を教えただけでなく、反対に高橋奎にチェンジアップの握りを聞くなどもした。周りになじめていなかった宇田川には愛のあるいじりを行い、溶け込むきっかけを与えた。とかく、年齢による上下関係に縛られがちな日本社会で、チーム最年長かつ実績抜群なダルビッシュの振る舞いは大きな意味があった。短期限定のチームを1つにした。

象徴的だったのは「投手会」だけでなく「野手会」にも参加したことだろう。強化合宿の後、壮行試合が開かれた名古屋でだった。ポジションを超えて、ダルビッシュがリーダーになった。過去の侍ジャパンでもチームを引っ張るリーダーの存在は大きかったが、投手は投手、野手は野手という意識が残っていたという。その壁を打ち破った。

野手会出席の経緯はこうだ。宮崎合宿終盤、山川、近藤ら一部の選手と食事に出かけた際、たまたま中村率いるヤクルト勢と出くわした。その際、中村の方から「ダルさん、名古屋で野手会をするので来てください」と誘われ、快諾した。当時の心中を明かした。「野手会、行きたいなと思ってたんですけど、自分はピッチャーですし、年も上なので。自分から(野手会に行きたいと)言ったら、断りづらいと思うし、場の空気が変になったら嫌だなあと思ってたんですよ」。

若い選手に対しては年齢の上下は関係ないとしながら、自らの行動には年齢の上下に気を使った。そこまでやってこそのリーダーだった。栗山監督が「ダルビッシュ・ジャパン」と言ったのは、本心だった。

今回、ダルビッシュがパ軍の信頼を得て、合宿初日から特例的に参加できたことが大きかった。また、栗山監督が早い段階からダルビッシュにアタックをかけたことも大きい。今永、山本、村上ら近い将来、メジャー移籍が予想される選手は多い。3年後の次回WBCでも、メジャーリーガーがリーダー役を担う可能性は高い。メジャーリーガーとの関係を密に維持できる首脳が、今後も侍ジャパンには欠かせない。【古川真弥】(おわり)