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第5回 開幕マウンド147球の真実

精度完ぺき13K!魔球ついにお披露目

魔球「ワンシーム」の握り方を見せながらスタッフと話すダルビッシュ(2010年3月19日=撮影・黒川智章)
魔球「ワンシーム」の握り方を見せながらスタッフと話すダルビッシュ(2010年3月19日=撮影・黒川智章)

 新シーズンの幕開けにふさわしい、野球ファンへのプレゼントを用意していた。ダルビッシュが、3月20日の札幌ドーム開幕戦・ソフトバンク戦で、未知の世界を体現した。聞いたことがない「ワンシーム・ファーストボール」という新球を携え、晴れのマウンドへと立ったのだ。小久保、オーティズ、多村、田上、松田と右のパワー打者が並ぶ相手打線。その「インコースに全部投げているのは、その球です。(精度は)いいですよ。完ぺき」と、ひそかに温めていた秘策で球春到来を告げたのだ。

 この「ワンシーム―」を制球によって、自在に変化させた。キャンプ、オープン戦期間中には「変化球は高めは伸びて、低めは沈むもの」と解説したことがある。投球を独自の運動センス、思考で科学し、力学も理解した上で、これまでも実証してきた。その結晶のような「魔球」とも表現される球種だった。右打者の内角低めへ食い込んでいけば突如、沈む。逆に高めなら、顔へ向かって浮き上がっていくような感じで伸びる。キャンプ期間中に興味を持ち、オープン戦でテストし、大一番で披露したのだ。

 ソフトバンクのエース杉内との投げ合い。お互いに序盤から飛ばした。ダルビッシュは、この新球を武器に押しまくる配球パターンを序盤から通した。ゲームプランは、自身が力でねじ伏せ、圧倒し、自軍に勢いと流れ、リズムを呼び込むことだっただろう。難攻不落の左腕と向き合う、打線への波及効果を含めた上でのチョイス。「勝つために投げるだけ」という強い信念の下、そのゴールへと導くために試合全体をトータルで予想した上での策だったといえる。

バツグン存在感 6年目の物語が始まる

ソフトバンクとの開幕戦で、相手打者を中飛に打ち取りほえるダルビッシュ(2010年3月20日=撮影・宮川勝也)
ソフトバンクとの開幕戦で、相手打者を中飛に打ち取りほえるダルビッシュ(2010年3月20日=撮影・宮川勝也)

 守備の乱れという不運もあり3回までに3失点。敗戦投手にはなったが、13個もの三振を量産し、完投した。昨年の巨人との日本シリーズでは、コンディション不良でやむなく技巧派へ「臨時転身」して、急場をしのいだ。その痛々しくも見えた姿を最後に、シーズンを終えた。そして迎えた今季開幕―。日本球界で突出したパワー投手である自負も込められているような開幕マウンドで、あらためて存在証明をしたようにも見えた。

 「点を与えるタイミングが典型的な負け投手だった。冷静に意識していれば、確実に5点は取られていなかった」。サバサバとしていた。内容ではなく、結果だけを淡々と自己分析した姿に、完全燃焼したという胸の内が見えた。白星だけが足りなかったが、新しい1年間のスタートを華々しく切った。今季、アクシデントさえなければあと少なくとも20試合以上は先発マウンドに立つ。開幕戦での敗戦の弁で、印象的な一言を残した。要所で失点したことを、自戒の念を込めて振り返った。

 「投げるために、ボールにもうちょっと意思があれば良かった」。  本人には、少し物足りなかった開幕戦だったかもしれない。ただ見ている誰もが今季にかける「意思」を感じ取った147球だっただろう。順風満帆に突き進んできたが昨季の故障なども糧とし、紆余(うよ)曲折を経て迎えた6年目。ダルビッシュの右腕から紡がれる新しい物語は想像不能、超越した世界が広がっていくことだろう。【日本ハム担当・高山通史】



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