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勝敗を分けた延長戦

球史に残る「小林・オマリーの14球」

延長11回、小林宏との対戦で本塁打性の打球を放ったヤクルトのトーマス・オマリーと、その行方を見るヤクルトベンチ
延長11回、小林宏との対戦で本塁打性の打球を放ったヤクルトのトーマス・オマリーと、その行方を見るヤクルトベンチ

 プロ3年目、24歳の若者が、球史に残る熱投を見せた。「小林・オマリーの14球」と語り継がれる伝説の名勝負。舞台は、1995年(平7)10月25日、神宮球場で行われた日本シリーズ第4戦だった。ヤクルトに3連敗し土俵際に追い込まれたオリックスは、この試合も1点のリードを許していた。だが、土壇場の9回に小川が起死回生の同点ソロ。延長戦に持ち込むと、仰木監督は第5戦に先発予定だった小林を10回からマウンドに送った。

 延長11回裏、1死から四球と安打で一、二塁。打者はこのシリーズ好調の4番オマリー。これがドラマの幕開けだ。オリックス絶体絶命の大ピンチに、指揮官は小林に言った。「速い球で攻めろ、強気で行け」。この言葉に、若武者は開き直った。

 時計はすでに午後10時を回っており、鳴り物応援はできない。双方の声援だけが神宮の杜(もり)にこだまする。それが独特の緊張感を生む。そんな異様な雰囲気さえ、小林は「全然僕の耳には入りませんでした」と言った。それだけ集中していた。

 オマリーは3球続けて見逃し、1ボール2ストライクと追い込んだ。だが、本当の勝負はここから。小林は徹底的にストレートで押す。142キロ、143キロ…オマリーはそれをことごとくファウルにする。そして7球目。内角の140キロストレートを、オマリーのバットがとらえた。右翼ポール際への大飛球。入ればサヨナラ弾…だが、ポールからわずか1メートル、打球は切れた。スタンドには歓声とため息が交錯した。同点弾を放った小川は、遊撃の守備位置で「たとえ打球がイレギュラーしても、顔で止めてやる」と小林の力投に応えようと燃えていた。ナインの思いは、だれもが同じだった。

開き直りとこだわり続けたストレート

10回からリリーフで登板し、14球におよぶトーマス・オマリーとの対決を制した小林宏(右から2人目)
10回からリリーフで登板し、14球におよぶトーマス・オマリーとの対決を制した小林宏(右から2人目)

 小林は変わらずに攻めの投球を続けた。13球目にスライダーを投げたほかは、ほぼストレート1本。12球目にも大ファウルがあったが、それでも押す。そして運命の14球目。137キロのストレートを内角低めに投げ込むと、オマリーは根負けしたように空振り。バットをたたきつける姿を横目に、小林、そして捕手中島がガッツポーズで互いをたたえた。

 続く古田も中飛に抑え、ピンチを脱すると、直後の延長12回、D・Jが決勝ソロ本塁打。「(2人の)すごい勝負を見て、とにかく勝ちたいと思ったんだ」とD・J。12回裏も小林が締め、4時間38分の激闘に終止符を打った。

 小林は「気持ちだけでしょ。開き直りってこういうのを言うんでしょうね。神戸に帰りたい、それだけでした」と興奮冷めやらぬ表情で話した。この年の1月17日、未曽有の大地震が地元・神戸を襲った。傷ついた人々を勇気づけるため「がんばろうKOBE」と、ユニホームの袖にしるして臨んだ大舞台。手に汗握る勝負に勝利し、地元はおおいに沸いた。

 このシリーズは全試合ナイターで行われ、第4戦の視聴率は、関東で35・2%、関西では36・3%という高い数値を記録。第5戦に敗れ、神戸に帰ることなくシリーズは敗退したが、小林は敢闘賞を受賞。この激闘が、翌96年、巨人を倒しての日本一へとつながっていく。【高垣誠】

今季の注目は新加入の助っ人陣

今季ソフトバンクから移籍したペーニャ(左)と西武から移籍したヘルマンが新制オリックスを引っ張る
今季ソフトバンクから移籍したペーニャ(左)と西武から移籍したヘルマンがオリックスを引っ張る

 森脇監督が指揮を執って2年目のオリックス。昨季はチーム打率がリーグ最下位、防御率は1位という極端な「投高打低」に悩まされた。打線の強化が課題だったが、オフに李大浩、バルディリスの主力打者2人が流出。その穴を埋めるべく新外国人ベタンコートらをとり、ベテラン後藤と鉄平をトレードするなど戦力の整備に努めた。

 注目は新助っ人たちだ。ソフトバンクからペーニャ、西武からヘルマンを補強。ベタンコートは内野はどこでも守れることから、指揮官は一塁ペーニャ、二塁または三塁ヘルマン、遊撃または三塁ベタンコートと助っ人で内野陣を構成する超攻撃的オプションを構想。糸井、ヘルマンらのスピードを生かし、鉄平や古巣復帰の谷、復活を期すT-岡田や坂口、若手の安達らがかみ合えば得点力アップが可能。投手陣はエース金子を筆頭に西、ディクソンらに新人吉田一、東明らも加わり厚みを増した。佐藤達、平野佳ら強力な救援陣は健在で、96年以来の優勝へ戦力は整いつつある。

オリックス担当記者

高垣誠(たかがき・まこと)
高垣誠(たかがき・まこと)
 1963年、兵庫県生まれ。オリックスはイチローフィーバーに沸いた94年以来、20年ぶりの担当。当時の現役選手はコーチになるなどすっかり様変わりしており、浦島太郎のよう。立ち張りが腰に来る50歳。


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