<WBC日本代表合宿>◇第4日◇18日◇宮崎

 侍ジャパンの投手陣が、白紙からの編成再考を迫られる可能性が出てきた。WBC代表候補合宿4日目の18日、ともに右肩に違和感のある前田健太投手(24)、浅尾拓也投手(28)が完全別メニューとなった。明日20日の代表発表で投手2人が外れるが、先発の軸と抑え候補筆頭の出遅れで、実力による純粋なジャッジメントが出来ていない。先発、ブルペンの持ち場も不明瞭で、13人の投手陣を決めた後、追加招集を行うべきとの意見もある。山本浩二監督(66)はじめ首脳陣は難しい判断を迫られることになった。

 キャッチボールが終わると、投手陣がマウンドに集まった。二塁走者を刺すことを念頭に置いた、速いけん制球などを行う投内連係。前田も、浅尾も輪の中に入らなかった。

 前田は、初日のキャッチボールからペースが上がっていない。「基本的に、あまり良くないです」と遅れを認めた。もともとスロースターターだが、「今年は例年と違う。やらないと。上げていかないと」と話した。浅尾は、明日20日の紅白戦に1イニング登板する。同じ肩痛から復調した杉内にアドバイスを求める姿があった。丁寧にお礼を言い「肩の動かし方、とかですね。どうですかね。やったばかりですから」と、わらをもつかむ日々が続く。

 20日の紅白戦後、カットする2投手が決まる。山本監督は当面の追加招集について「ない」と即答。「戦略的な面もある。チームとして、1試合戦うことを考えないと」と話し、先発、抑えの軸として前田、浅尾を構想のど真ん中から外していない。ただ、悠長に復調を待つ余裕もない。

 3月2日のブラジル戦まで残り2週間を切った中で、明確な役割が固まらない。6イニングで行う紅白戦は摂津、沢村が先発で2イニング。涌井、山口が抑えで1イニング投げる。ただこの順番は、選手の状態に考慮し当てはめただけで、本番での持ち場と連動していない。前田は24日オーストラリア戦に登板予定。投球内容を受けてから配置を決める…、では遅すぎる。

 視察から丁寧に選手をチェックしてきた与田投手コーチが、私見と前置きした上で、極めて客観的な見解を示した。

 与田コーチ

 12球団の今、を見ることは出来ない。でも有事の備え、は常に頭の中に入れておかなければいけない。体調に問題があれば、今後の野球人生をつぶしかねない。つらい準備をしてくれているが、覚悟を持った決断をする時期。

 どこかが痛い選手に一発勝負のしのぎ合いを任せられない。選手を預かる立場としても、無理をさせて長いシーズンを棒に振らせることは許されない。選手登録の変更は大会直前まで可能。同コーチは追加招集の可能性について「ゼロじゃない」と否定しなかった。

 水面下で危機管理が進んでいる。オリックス平野佳、中日吉見ら、好調を維持している実力者。昨年11月、キューバとの強化試合に参加した面々など具体的な名前が挙がり始めている。3連覇を最優先に編成できるか。山本監督の腕の見せどころだ。【宮下敬至】

 ◆過去のWBC日本代表緊急招集

 06年の第1回大会は、壮行試合で黒田(広島)が右手を負傷し、開幕前の2月25日にロングリリーフが可能な久保田(阪神)が代表入り。馬原(ソフトバンク)は、左肩痛で渡米後に離脱した石井弘(ヤクルト)に代わって緊急渡米し、2次リーグから合流した。第2回大会は08年12月に黒田(ドジャース)が調整の難しさを理由に辞退。09年1月9日に岩田(阪神)が代表候補に追加招集された。また、第2ラウンド最終戦で村田(横浜)が右足を負傷し、栗原(広島)が準決勝から合流した。