手負いのマエケンと心中する。侍ジャパンの山本浩二監督(66)は19日、右肩に不安のある前田健太投手(24)の代表メンバー入りと、23、24日に行われるオーストラリアとの強化試合(京セラドーム)での登板を明言した。前田健は合宿初日から調子が上がっていないが、田中と並ぶ先発の軸に命運を託す。前田健のWBC第1ラウンド先発は、3月3日中国戦(ヤフオクドーム)が濃厚だ。代表メンバー28人は、今日20日に正式決定する。

 山本監督は初志貫徹、前田健を侍ジャパン先発の軸として立てる。右肩に不安のある前田健は、この合宿中、キャッチボールで調整遅れが分かるほど軽めの投球に終始している。誰もが感じる「先発の軸は田中と前田健で変わらないのか?」という疑問を投げかけられた同監督は、「田中、マエケン、杉内なんかも当然、今の状態なら当然、な」と先発3本柱を列挙し、前田健を代表メンバー当確とした。

 17日、広島との強化試合に広島側の先発で出場した。結果は2回無失点。セットポジションの技術が非常に高く、走者を出してもしのいだ。直球は130キロ台前半がほとんど。鶴が羽ばたくような、自信に満ちた美しいワインドアップの投球フォームも鳴りを潜めた。

 山本監督は今合宿入り後、広島野村監督に聞き取り調査した。広島での調整方法や状態などを細かく取材し、回答を踏まえて「上がってきている、ということ。段階、段階でキッチリ合わせてね」とGOサインを出した。23、24日のオーストラリア戦に登板後、3月3日のWBC第2戦の中国戦に先発させる青写真は、最初から崩していない。

 右肩の不安とはあくまで不安であり、故障とは別もの、と解釈している。残り2週間で劇的に調子を上げ、本番に合わせてくれるはず。山本監督は「自分の調整段階、っていうのは分かるから」と、前田健の申告と実績を信じている。だからこそ余計に、周囲は目を光らせて経過をチェックする必要がある。与田投手コーチは「個人的には」と前置きした上で「本戦がキツいとなれば、(右肩違和感の)浅尾に限らず難しいと思う。3月2日に万全で、ですね。前田は明日、ピッチングをする、かもしれない」と、努めて冷静に現実を見た。

 休養日のこの日、前田健は練習を行わなかった。例年のシーズンだったら意に介す必要のない遅れかも知れない。WBCは一発勝負で、かかる重圧も、ボールをはじめとした環境も、全く異なる。何より日本球界最高峰のメンバーとして、日の丸を背負って力を出し切る義務がある。前田健は重責を全うできるか。【宮下敬至】