今は「落ち武者」でも、本番では真のサムライに生まれ変わる!

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表が27日、決戦の地、福岡に入った。宮崎、大阪の実戦で深刻な貧打を露呈したサムライジャパン。中でも中心を担う巨人勢の不振は深刻だ。主将で4番、阿部慎之助捕手(33)は「今の自分は落ち武者です」と、あえて不振を認め、どん底からはい上がっていくことを決意。阿部を慕う巨人のチームメートで結果の出ていない長野と坂本も、力強く巻き返しを誓った。

 ベンチ裏の通路を歩く足取りが重たい。阿部は思い詰めた様子で決戦の地、福岡に入った。宮崎、大阪で出場した対外試合4試合で12打数1安打。「4番は不動」と断言した山本監督を不安にさせる日々が続く。3月2日のWBC開幕が刻一刻と迫る中、思わず弱気な言葉が主将の口から漏れた。

 阿部

 今の自分は“ニセ侍”と言われてもしかたない。いや、サムライですらない。まさに“落ち武者”ですね。

 若侍たちを引っ張るリーダーが自分のことを「落ち武者」とまで言った。刀だけでなく心まで折れてしまったのか…、と心配させるような自虐的な言葉だった。

 だが、目の輝きは失っていなかった。「何とかなると思うし、何とかしないといけない」。開幕まで、残り2日。あえて、どん底の状態であることを自覚し、自分自身を追い込みたかったのだろう。ヤフオクドームでの練習では、逆方向を中心にコンパクトなスイングを繰り返し、修正点を確認。報道陣にコメントを求められても「練習中なんですいません」と足早にテレビカメラの横を通り過ぎ、悲壮感を漂わせながら汗を流した。

 昨季圧倒的な強さで日本一に輝いた巨人勢を中心に編成された日本代表。阿部とともに「貧打」の象徴となっている2人もまた、本番が近づくにつれて表情が変わってきた。坂本は「ここからは結果にこだわる。気持ちを強く持ってやっていく」と意気込んだ。長野はさらに気合十分で「周りはピーピー言ってますけど。本番に入って打てなかったら何を言われても仕方がない。まあ、見ていてください」と、強気に言い放った。

 巨人勢にとってはチームメートとの再会もいいリフレッシュになりそうだ。日本代表は今日28日、大会前最後の強化試合で巨人と対戦する。グアム自主トレで一緒に汗を流したかわいい後輩、大田の話題になると、阿部のほおが緩んだ。「泰示は7連続三振ですか…。ボールが前に飛んでる分だけ、僕のほうがましですね」。この時だけは、日本中の期待を背負う重圧を忘れ、無邪気に笑った。【広瀬雷太】