松田が日本の熱男になった。2点リードで迎えた5回1死一、二塁のチャンスで甘いカーブを捉え、リードを5点に広げる左越え3ラン。ベンチに戻ると、おなじみの「熱男ポーズ」で雄たけびをあげた。侍ジャパンでは封印するはずのパフォーマンスだったが、喜びが勝った。

 「青木さんから、向こうの投手は捨て球はないからどんどんストライクを取りにくると言われて、初球から積極的に振っていこうと思っていた。これまで結果が出ていなかったが、思い切っていく自分の持ち味が出せてよかった」

 予感はあった。2回に中前打で出塁すると二盗。4回にも再び中前打で出塁し、山田の左越え適時二塁打で決勝点となるホームを踏んだ。8回にも右前適時打で4安打4打点。2大会連続で飛び出した松田の1発が最後までキューバに重くのしかかった。

 左翼席の野球少年を救う1発でもあった。4回、山田の左翼への本塁打かという当たりを少年がグラブでキャッチ。判定が二塁打とされると、周囲からのヤジでしょんぼりしていた。「そういうのもいろいろあるのがこの大会。実際、独特の雰囲気だった」。初回の自らの失策とともに、少年の“ミス”もひと振りで帳消しにした。

 大会までの事前の対外試合では11打数2安打。調子が上がらず、小久保監督は田中の三塁起用も検討したが、最終的に松田に先発を託した。松田は試合前、バント練習を終えると、背後にあったネットの土台に乗って背伸びをし、三塁側のキューバベンチを見て「見下ろしたった!」と、ニヤリと笑った。試合前から強気だった。

 正月に家族で福岡県内の宗像大社、宮地嶽神社、筥崎宮を回る三社参りを行い、WBC優勝を願掛けてスタートした2017年。世界一への第1歩を格別な1発で彩った、価値ある勝利だった。【福岡吉央】

 ▼日本は4番筒香と8番松田が本塁打。日本がWBCのキューバ戦で本塁打を記録したのは初めてだ。WBCで日本の4番打者の本塁打は09年1次R韓国戦の村田(横浜)13年2次Rオランダ戦の阿部(巨人=2本)に次いで3人目。また、松田は4安打。WBCで日本人選手の4安打は09年2次Rキューバ戦の青木(ヤクルト)同年決勝の韓国戦のイチロー(マリナーズ)に並ぶタイ記録。1発含む4安打は松田が初めて。