広島とドジャース、ヤンキースで日米通算203勝を挙げ、昨季限りで現役引退した黒田博樹氏(42)が第4回WBC1次ラウンドのオーストラリア戦(東京ドーム)を観戦。日刊スポーツが独占掲載する「侍ジャパン随行記」で8日も、侍ジャパンの戦いぶりを熱く語った。先発菅野のエース的な投げっぷりを絶賛。第1戦は打ち勝ち、第2戦は守り勝った日本代表が、いい形のチームになったと太鼓判を押した。

 エースらしい投球だった。この日、先発した菅野は決してベストピッチングではなかっただろう。思うように使えない球種もあった。それでも使える球種を中心に試合を作った。期待された中、期待通りの投球をする。さすがだ。結果を残して、チームに勝ちをもたらす。まさにエースの姿だった。

 試合中は投げにくさを感じていたかもしれない。僅差の試合展開。アメリカ人の球審は内角に厳しかった。菅野は制球力があるので、左打者に外角ボールからストライクとなるスライダーを投げられるが、オーストラリアの左打者はプルヒッターが多く、投げ切れていなかった。

 2回には1発で1点を失った。7番打者の振り遅れたような本塁打は、投手心理として悔いが残るもの。だが、捉えられて引っ張られた本塁打ではなかったので、切り替えやすかったのかもしれない。失点しても菅野は落ち着いていた。4回は得点圏に走者を置いてからの連続三振。特に5番から奪った見逃し三振のように、内角をもっとうまく使えば、彼の良さがもっと出ていたのかもしれない。苦しい中でも、チームにいい流れをもたらした。

 試合後、菅野の口から「1イニングでも長く」という言葉が出た。エースの気質だろう。すべての球種が一級品であることは言うまでもなく、シーズン中はマウンドに上がれば白黒つけるまで降りないという姿勢が感じられる。特に中継ぎ投手が連投しているときは最後まで投げきってやろうという気概がある。個人的には、投手の分業制が確立されても、エースは最後まで投げ切るのが理想。そういう気持ちがあるからこそ、65球の球数制限の中、5回途中まで投げられるのだと思う。

 2番手岡田にはエースの後に登板した重圧がかかっていたように感じる。2球目の暴投で顔色が変わったのが見て取れた。一方で3番手の千賀は、今後に期待を持たせる投球だった。力のある真っすぐに制球力、何より空振りを取れる能力が魅力。終盤の大事なところで投げさせても面白い存在になると感じた。

 日本代表は本当にいいスタートを切った。初戦は野手陣が打って勝ち、2戦目は投手陣が最少失点で踏ん張って勝った。対照的な試合展開をチームとして経験できたことは大きい。また、先発野手全員に安打が出た。1日の休養を挟み、10日の中国戦は勝ちに行きながら、いろんな投手や野手を使いながら試すこともできるだろう。チームはいい方向に向かっている。