侍ジャパンが誇る不動の4番、筒香嘉智外野手(25)が、アメリカ行きを決める一撃を放った。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンドのイスラエル戦。0-0で迎えた6回先頭、直球をバックスクリーン右へ突き刺した。日本は全勝で現地時間21日(日本時間22日)に米ロサンゼルスで行われる準決勝への進出を決めた。筒香は1次ラウンドを含めて3本塁打8打点。頼れる主砲が世界の頂まで猛進する。

 打った瞬間。東京ドームがうなりを上げた。イスラエルの外野陣は1歩も動けない。振り切ったバットを静かに手から離した筒香が、悠然とダイヤモンドを周回した。6回無死、2番手アクセルロッドの141キロ直球。ど真ん中の絶好球を完璧に捉えた。バックスクリーン右に突き刺した。「4番どうこうよりもチームが勝てばそれでいい。千賀と平野さんがテンポよく投げてくれた。打席に入りやすかった」と会心の一撃を振り返った。

 ここまでの全6試合で「4番」に座る。ど真ん中に不動の地位を確立した。7日の開幕キューバ戦は先制適時打と1号ソロで出陣を告げた。この日も均衡を破る3号先制ソロで一挙5点のビッグイニングを導いて勝負を決めた。「宮崎からこのメンバーでやってきた。気がついたらチームっぽくなっていた。全員で戦っている。その一員として誇りを感じる」。代表チーム特有の遠慮がちな、寄せ集め感はない。戦いの中で一体感が生まれ、本物のチームに変わったと実感した。

 朝、筒香は寝起き直後にベッドの横に立つ。両足を肩幅に広げ「毎朝、まずは重心の位置を確認するところから始まる」と説明する。試合開始までに微妙にずれた重心を定位置に戻す作業に入る。「廊下を歩くときにも意識する。シャンプーするときに脇を上げすぎると重心が上がる。重心を意識して準備をするのってすごくしんどいんです」と、体を支える重心にとことんこだわる。打つために、勝つために、一切の妥協を許さない。

 侍ジャパンの重心を担う。堂々たる振る舞い。日本が誇る25歳のスラッガーは「やるからには勝ちたい。自分の力を出すための準備をしてきた。自分の力を出し切る自信はある」と言い切った。世界の頂点が2つ先に見えるところまできた。「怖がる必要はない。同じ人と人が戦う。負けを恐れずに思い切って戦いたい」と闘争心と好奇心を融合させた。猛者たちがひしめく世界4強の舞台、アメリカへ-。いざ、乗り込む。【為田聡史】