今年で25周年を迎える鎌倉の名店「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」の店主堀内隆志さん(51)は熱心なプロレスファンでもあります。WWE中邑真輔ら数々のレスラーとの交遊やプロレスの魅力などを語ってもらいました。【取材・構成=高場泉穂】

01年4月、ノア広島大会で勝ち名乗りで手を上げる三沢光晴さん
01年4月、ノア広島大会で勝ち名乗りで手を上げる三沢光晴さん

堀内さんの人生は、プロレスと深く結びついている。妻千佳さんと出会い、親しくなったきっかけが故三沢光晴さんだった。

「プロレスは、父が好きだったので小学校の頃から一緒にテレビで見ていました。(ミル・)マスカラスや、猪木さんが好きでしたね。1度は離れましたが、四天王(※注)が出始めたころに見始めました。94年に店を開いて数年経った頃、ここに営業に来た嫁さんと出会いました。持っていた荷物に週プロが入ってたんですよね。そこで「プロレス好きなんですか?」と聞いて。嫁さんも三沢ファンだったので、全日本を中心にいろんな大会を一緒に見に行きました」。今年18歳になる夫妻の愛犬パグの名前は「ミサワ」だ。

6月、ロバート・ルードを執拗に攻める中邑真輔
6月、ロバート・ルードを執拗に攻める中邑真輔

コーヒーを通じて選手とも交流が生まれた。12年のある日、現WWEの中邑真輔がいきなり店に訪れた。「あれ? 大きい人が来たな、と思ったら中邑さんだったんです。それまでレスラーの方が来ることはなかったので、舞い上がっちゃって。コーヒーを食後に頼まれたんですけど、先に出しちゃって、しかも(手が震えて)ガタガタガタ…としちゃいました」。

以来、中邑が度々店に訪れるようになった。堀内さんは今年3月、コスタリカへの豆買い付けの帰りに米・ミネアポリスでスマックダウンを観戦。中邑に直接コーヒー豆を差し入れた。春先に帰国した際にも来店し、人気メニュー「プリンパフェ」を食べていったという。また、コーヒー通で知られるWWEのセザーロとも6月の両国大会で交流し、豆をプレゼント。DDTのアントーニオ本多、竹下幸之介らもなじみ客の1人だ。

カフェ経営やコーヒー作りは堀内さんにとっての表現。プロレスラーに重なる部分もあると感じている。「店をやっていると出会いも別れもあり、浮き沈みもある。僕もフリーの選手みたいなもので、自分が焙煎(ばいせん)したコーヒーを飲んだ方がどう評価してくださるのか、試合じゃないですけど、表現としてどう受け取ってくれるか考えながらやっています」。

WWE中邑真輔のポーズをとる「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」の店主堀内隆志さん
WWE中邑真輔のポーズをとる「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」の店主堀内隆志さん

仕事の合間を塗ってテレビや現地での観戦を楽しんでおり、それが日々の活力につながるという。「仕事でつらいときもあるんですけど、プロレスを見ると元気が出るんですよね」。店を開いて25年、焙煎を始めて10年。「僕も試行錯誤しながら、現役を続けることが目標です」と語った。

◆堀内隆志(ほりうち・たかし)1967年(昭42)9月30日、東京都生まれ。大学卒業後、流通業を経て、94年に「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」を開店。ブラジル音楽にも精通し、FMヨコハマなどラジオパーソナリティーとしても活躍する。

※注 四天王…90年代前半以降全日本プロレスの人気をけん引した三沢光晴、川田利明、小橋健太、田上明の4人を指す言葉。彼らが中心となり行った激しいファイトスタイルを四天王プロレスという。