WBA世界フライ級王者の井岡一翔(27=井岡)が、4月23日にエディオンアリーナ大阪で同級2位ノクノイ・シットプラサート(30=タイ)と5度目の防衛戦を行うことになった。

 最大の関心は、61連勝中で世界初挑戦の相手よりも、井岡が勝って具志堅用高が持つ「世界戦14勝」の国内最多記録に並べるかどうか、だろう。WBC世界バンタム級王者の山中慎介は3月の試合で12度目の防衛に成功し、具志堅が持つ「13度防衛」の国内記録に王手をかけた。世界戦勝利数と防衛回数では、どちらが価値が高いかは判断できないが、世界3階級を制している井岡はミニマム、ライトフライ王者時代も負けて王座を失ったことはなく「世界戦14勝」も大きくたたえられるべきものだろう。

 具志堅が、WBA世界ライトフライ級王座の13度目防衛に成功して世界戦14勝目を挙げたのは、80年10月だった。それから37年間、誰も破ることができなかった記録を前にして、井岡もあらためて具志堅の偉大さを思い知った。

「僕以外にも山中選手だったり、内山選手だったり、常に13回防衛という記録は、僕たちが勝つにつれて、期待されていくにつれて、出てくる。具志堅さんが当時積み重ねて、その記録を残したという、その重みを感じてます。世代はまったく違いますけど、それだけ影響を与える選手ということは間違いないので、相当大きな刺激はもらってます」

 試合の巡り合わせもあり、山中が次戦で挑む13回連続防衛よりひと足先に、井岡は世界戦14勝の記録に挑むことができる。かつて、具志堅を取材した時、井岡について「パンチが正確だ。だからこそ、軽量級でもKOを量産できるんだ」と、安定した打撃術を評価していた。自身の力を認めてくれているレジェンドへ、肩を並べる勝利まで、あと1つ。

 「やってる限りは、防衛だったり、勝利を積み重ねたいと思ってるので。今回勝って具志堅さんの記録に並べるのはすごく光栄なこと。あと1戦まで来てますけど、油断はできないので、しっかり気を引き締めて、終わってみて並べたらいいなと思います」。井岡が目を光らせた。【木村有三】