遅すぎたのか、満を持してなのか、遠回りをしたのか。新日本プロレスの柴田勝頼(37)が、今年ブレークしそうな勢いだ。3月21日の長岡大会で、ニュージャパン・カップ(NJC)初優勝を果たした。優勝者は好きなタイトルに挑戦できるという権利を行使し、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカに、4月9日の両国国技館大会で挑戦することも決まった。

 柴田は、その立ち姿だけでファンを魅了する、男臭いレスラーだ。黒のパンツに、ガウンやTシャツなど余計な装飾は一切なし。タオル1本を首に巻いて、リングをにらみつけるように入場するシーンに、ファンは興奮する。その後ろ姿は、若き日のアントニオ猪木をほうふつさせるオーラを放っている。

 1998年に新日本に入団し、翌99年10月にデビューした。04年には、棚橋弘至、中邑真輔とともに新闘魂三銃士として売り出された期待の星だった。しかし、05年に退団し、総合格闘技へ戦いの場を求めた。その後、12年から再び新日本マットで戦い、16年3月に再入団した。

 紆余(うよ)曲折のレスラー、格闘家人生だが、その経験が現在の柴田のファイトスタイルをつくっているのだろう。その戦いぶりは、とにかく武骨。リング中央で相手を挑発するように、壮絶な打撃戦を挑み、決して引くことがない。見ている方が痛くなるような戦いには「昭和のプロレス」の匂いがして、それが多くのファンを引きつける理由になっている。

 NJCに優勝し、オカダに挑戦した理由が3年も前の、14年2月のオカダからの言葉だったというのも、いかにも柴田らしい。当時オカダに挑戦した後藤洋央紀のセコンドにについていたが、試合後に次期挑戦者に名乗りを上げた。帰ってきた言葉が「挑戦したかったら、NJCに優勝してこい」だった。それから3年かけてようやく挑戦権をつかみ、オカダの名前を口にしたのだ。

 流れの速い新日本プロレス界にあって、オカダの約束を3年間も胸に秘め、約束を実現した柴田に、昭和の匂いを感じてしまう。群雄割拠する新日本にあって、柴田もまた、シングルマッチに外れのないレスラーの1人だ。4月9日、両国国技館でのオカダ戦は、間違いなく名勝負になるに違いない。団体を超えプロレス界の顔となってきたオカダと、柴田の戦い。棚橋でも内藤でもオメガでもない、2人の戦いに今から期待が高まっている。【プロレス担当=桝田朗】