全日本プロレスに復活の兆しが見えてきた。28日の両国国技館は6550人で満員の発表だった。午後3時から約4時間半。62人のレスラーが出場したが、第0試合から、最後の3冠ヘビー級選手権まで会場には心地よい活気が感じられ、大いに盛り上がった。

 ジャイアント馬場が創設し今年で45周年。新日本と並ぶ日本プロレス界の老舗団体は、馬場さんの死後、何度も経営者が変わり、選手の離脱などを繰り返した。それが、14年7月1日に秋山準が社長に就任し、その当時のどん底から、客足が徐々に戻っている。4月のチャンピオンカーニバルの後楽園大会では久しくなかった大入り満員を記録。大都市圏を中心に人気回復の傾向にある。

 秋山とともに経営に携わる大森隆男取締役は「団体の中にいると実感はない」と言いながらも、手応えを感じている。「残った選手たちの頑張り、少人数のスタッフが1人何役も仕事をこなし、若手の意識も変わってきた」と話す。「オレがやらなきゃ」という気持ちが、トレーニングでも試合でも出ているという。

 3冠ヘビー級王座を石川から奪い返し2度目の戴冠となった宮原健斗や、野村直矢、青柳優馬といった若手の台頭。さらに秋山や大森、渕といったベテランがそれぞれの役どころを感じて、試合を盛り上げる。馬場時代をよく知る渕は「おれたちが悪役商会でやっていた時代と、お客さんの反応が似てきた。馬場さんの言った明るく楽しいプロレスが、リングでできている」と話す。

 秋山社長体制になり、大日本や地方のインディー団体などとも交流を広げた。両国大会では、女子レスラーも登場した。また、過去に全日本に所属したレスラーたちも呼び戻され、ファンには懐かしい顔も見られる大会となった。全日本退団後初めて参戦したというグレート小鹿(75)は「全日本のリングは20年ぶり。全日本のリングはにおいがするんだよ。ボクが日本プロレスから吸収合併で来たころの初期のにおいがまだ残っている。秋山社長が地に足がついた経営をして、ここまでやってきた。秋山社長以下の努力をほめてやりたいよ」としみじみと話していた。

 現在のプロレス界は新日本プロレスの一人勝ち状態が続いている。グレート小鹿も「今は横綱が1人いて、あとはせいぜい三役か平幕以下。プロレス界活性化とために全日本には頑張ってもらいたい。全日本はオレらの心のふるさとなんだよ」と願いを口にした。大森隆男取締役も「今に見とけよ、と思っている」と反転攻勢を誓った。【桝田朗】