甲冑をまとって入場するビッグ・バン・ベイダー
甲冑をまとって入場するビッグ・バン・ベイダー

 あのビッグバン・ベイダーが他界した。87年12月、新日本プロレスの両国大会に「たけしプロレス軍団」(TPG…タマゴかけご飯=TKGみたい)の刺客という触れ込みで、猪木をあっさりフォールした。当時学生の私はテレビで見て憤ったもんな…TPGも、「皇帝戦士」いうキャッチもようわからんかった。何より唐突過ぎて「何じゃこれ?」てな感じで。場内のファンは「なめとんのか?」と騒いで暴動になった。プロレスの“うさんくささ”は毒にも薬にもなるけど、まあ猛毒でしたなあ…。

スタン・ハンセン(左)にドロップキックを放つビッグ・バン・ベイダー
スタン・ハンセン(左)にドロップキックを放つビッグ・バン・ベイダー

 ただ力はすごかった。パワー殺法はもちろん、190センチ、170キロで宙を舞う軽やかさまであったりしましたからね。

 当時はスーパーヘビー級レスラーが山ほどおった。新日本では、ベイダーの約1年前に初来日したスティーブ・ウイリアムス。岡八郎さんもビックリの奥目でいかつい顔は、キャッチの「殺人医師」にぴったり。強烈でえげつない投げ。「岩」みたいな体つき。プロレスが上手な印象はなかったけど、逆にそれがすごみを感じさせて“最強説”を唱える向きも多かったと思います。

 クラッシャー・バンバン・ビガロもすごかった。初来日が87年1月。つるつる頭に彫り物をして191センチ、170キロの体でムーンサルト・プレスを決めたりしてた。体形はマッチョやなく、明らかなデブやのに。当時実況の古舘アナがつけたキャッチは確か「空飛ぶ入れ墨獣」。うまいよな。

 90年に初来日したトニー・ホームもいかつかった。元はフィンランドのヘビー級ボクサー。橋本真也をパンチで圧倒してた。「腕っ節が強い」という言葉が彼ほど似合うレスラーはおらんのやないでしょうか。

 全日本に来てた外国人では、テリー・ゴディもすごかった。キャッチは「人間魚雷」。パワーボムの元祖って言われてるけど、引っこ抜くようなバックドロップもえげつなかった。195センチ、135キロの体つきはビルドアップしたというよりバランス良く鍛えた感じで、ナチュラルな強さが印象的でした。

左からスティーブ・ウィリアムス、クラッシャー・バンバン・ビガロ、テリー・ゴディ
左からスティーブ・ウィリアムス、クラッシャー・バンバン・ビガロ、テリー・ゴディ

 …てな感じが、53歳のオヤジによる30年ほど前の“独断的スーパーヘビー級列伝”です。ベイダーの死で思い出すまま書きました。大変驚くことに彼らは全員、すでに他界しております。中にはステロイド服用の影響があった人もおるんでしょうが、実に悲しい。規格外のパワーに圧倒され、もん絶する日本人レスラーとの攻防。…見てて力入ったもんなあ。

左からケニー・オメガ、クリス・ジェリコ、ジェイ・ホワイト
左からケニー・オメガ、クリス・ジェリコ、ジェイ・ホワイト

 最近はどうか。フィールドを新日本に絞って見ると、IWGPヘビー級王者ケニー・オメガは183センチ、92キロ。IWGPインターコンチネンタルヘビー級王者クリス・ジェリコは182センチ、103キロ。IWGP USヘビー級王者ジェイ・ホワイトは186センチ、100キロ。みんな、うまい、速い、技もすごい。見てて、楽しい。素直にそう思う。でもちょっと物足らん。文句なしのド迫力っちゅうプラスアルファがないもんか…。まあ、いにしえのプロレスを愛するオヤジのたわごとですけど。【加藤裕一】