新型コロナウイルスの感染拡大でスポーツイベントの自粛が続く。中でも顕著なのは屋内型で、ボクシングは3月中の興行中止が4月いっぱいまで延びた。興行を主催し、商売とするジムにとって、致し方ないとはいえ、ダメージは計り知れない。

プロ野球やサッカーJリーグでも試合日程が決まらない状況の中で、最も影響を受けるのが選手だろう。野球の先発投手であれば、登板日に合わせて逆算して調整する。ボクシングでいえば、さらに長い期間をへて、試合に合わせて調整する。しかも10キロ近い減量を伴う。その難しさは想像すらできない。

まだ感染拡大が広まっていない2月末にWBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(28=BMB)の7度目防衛の祝勝会が京都市内で行われた。寺地は「この時期に来てくださるみなさんは本当にありがたい。握手とかもあまりできないのに」。直接の接触は避けながら、写真撮影などファンとの交流に奔走した。

その一方で不安は尽きない。当初は年内3度の防衛戦を行い、防衛回数2桁10回がプランだった。しかし米国、欧州まで感染拡大が広がる中、マッチメークは容易ではない。寺地も「メンタル的な影響はないが、(次戦が)いつ決まるんやろ。当分、決まらないでしょうね」と本音を漏らしていた。

ボクサーにとって減量は、試合以上の難敵と言われる。体質的に減量苦が少ない寺地だが、明確な目標がなければ当然、モチベーションも上がらない。「(年内のV10が)無理なら無理で引きずることはない。今まで通り、流れに任せるだけです」と話したが、本音はきついと思う。

ウエート調整が厳しく、複数階級制覇が主流の中、寺地はかたくなに防衛回数にこだわる。元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高のV13。その偉業を応援したいからこそ、あらゆるイベントにダメージを及ぼすコロナ禍が憎い。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)