1粒で2度おいしいカードだと思う。

新日本プロレスは1月31日、IWGP・USヘビー級王者ジョン・モクスリー(35)-同王座挑戦者権利証保持者KENTA(39)とのタイトル戦を発表した。動画配信の新日本プロレスワールドによる米国発の番組「NJPWストロング」の2月27日分で対戦する。日本ではなく、米国ファンに向けた配信限定マッチで王座戦が組まれたのはUS王座という理由だけではない。WWEファンからみれば、ディーン・アンブローズ(モクスリー)-ヒデオ・イタミ(KENTA)の初シングル戦という注目カードになる。

米インディー団体などを経て11年にWWEと契約したモクスリーは12年にローマン・レインズ、セス・ロリンズとユニット「ザ・シールド」を組んでWWEを席巻。13年にWWE・US王座、14年には「狂犬」の愛称となり、その地位を固めていった。この14年にKENTAがノアからWWEに加入。登竜門ブランドNXTでファイトし、年間最大の祭典となる翌15年のレッスルマニア31大会では、モクスリーがWWEインターコンチネンタル(IC)王座争奪7人形式ラダー戦、KENTAもアンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤルに出場した。

徐々に距離が近づいているようにみえたが、同年にKENTAが右肩負傷して以降、一気に遠ざかった。モクスリーが15年にIC王座、16年にWWEヘビー級王座、17年ロリンズと組み、ロウ・タッグ王座も獲得し、主要4王座を1度ずつ獲得するグランドスラムも達成。右腕負傷も乗り越え、トップスターへと駆け上がった一方、KENTAは16年にリング復帰後、クルーザー級選手が中心のブランド「205Live」へ。モクスリーが所属したロウ出場も限られた。日本公演ではグランドスラムを達成したザ・ミズも下したが、両者が交わることはなかった。

偶然にもKENTAは19年2月、モクスリーも同年3月にWWEを退団。そして今度は新日本マットでIWGP・USヘビー級王座を争うことになった。昨年9月の王座挑戦権利証獲得以降、4度の争奪マッチも乗り越えたKENTA。そのストーリーとともに、WWE加入の15年から6年かけてつかんだイタミ(KENTA)のアンブローズ(モクスリー)戦というストーリーもある対戦だ。日米のプロレスファンが感情移入できるカードと言っていい。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

KENTA(2021年1月4日撮影)
KENTA(2021年1月4日撮影)