スターダム後楽園大会 朱里を破り、バックステージで取材に応じるウナギ・サヤカ(撮影・松熊洋介)
スターダム後楽園大会 朱里を破り、バックステージで取材に応じるウナギ・サヤカ(撮影・松熊洋介)

14日に行われたスターダム後楽園大会で、ウナギ・サヤカが「シンデレラトーナメント」準々決勝で実力者の朱里を破り、4強に進出した。

試合の半分近くはエプロンでの攻防。DDTを決められ、劣勢の中、朱里の豪快な膝蹴りを間一髪でかわし、そのまま場外に蹴り落とした。勝利後、リングにうずくまり、感極まった。

アイドル活動をしていた時にプロレスに魅了され、東京女子プロレスに入門。その後、スターダムに移籍し、今年4月正式入団となった。「常に全力」がモットー。試合後は、顔に大きなアザを作りながらも、元気いっぱい、明るい声で取材に応じる。

2月には自身の成長をアピールできるシングル「7番勝負」に挑んだが全敗。「どうしたウナギ。しっかりしろよ」。「お前はいらない」などとアイドル時代には味わったことのない罵声を浴びせられたが、「だからどうした」と力強く言い返した。昨年12月には中野、白川と結成したコズミック・エンジェルズでベルトを戴冠。「シンデレラトーナメント」で4強に進出し、初のシングルのベルトも見えてきた。

女子プロレス界にはアイドルやモデル、タレント出身の選手が多い。スターダムで「Hカップグラドルレスラー」として売り出し中の白川は30歳でデビュー。昨年12月の誕生日には鼻を骨折したが「心は折れていない」と動じなかった。「後悔する人生は送りたくない。ブサイクになっても、整形するよりもベルトが欲しい」と力強い。

昨年からスターダムに参戦し、今年1月に入団したなつぽいは「このリングで命をかけて全力でプロレスに打ち込む。頂点を取るためにきた」と決意は固い。150センチの小さな体からは想像できないほどの激しいぶつかり合いを披露する。

同じく昨年スターダムに入団した172センチのひめかは「ジャンボプリンセス」の愛称で親しまれている。入団を機に10キロ以上の減量。「しっかりしていかないといけないという責任感が必要。毎日プロレスのことで頭がいっぱい」と日々の練習に打ち込む。

彼女たちはリング上で激しい動きや険しい表情を見せる一方で、タレントとしての“顔”も忘れていない。ホテルでの調印式や記者会見では、美しいドレス姿で登場。雑誌の撮影では、全身アザだらけの中、リング上で見せることのない、かわいらしい笑顔やセクシーポーズで、カメラに納まり、ファンを魅了する。

東京女子プロレス 伊藤麻希(左)にかかと落とし「Finally」を見舞う荒井優希(2021年5月4日撮影)
東京女子プロレス 伊藤麻希(左)にかかと落とし「Finally」を見舞う荒井優希(2021年5月4日撮影)

また、今月4日の東京女子プロレスでは、SKE48の荒井優希(23)がプロレスデビュー。同じアイドル出身の伊藤麻希にギブアップ負けとなったが、長い足を生かした強烈なかかと落としをさく裂させるなど、躍動。試合前には伊藤に「SKEの肩書に救われてるヤツにしか見えない」と挑発を受けていたが、試合後には「いいかかと落としだったと思う。誰でもできる技じゃない」と実力を認めさせた。SKEの先輩でレスラーと交流もある松井珠理奈からもアドバイスをもらい、コンサートのステージとは違った力強いパフォーマンスを披露した。「経験や、力の差を感じたけど、プロレスは楽しい。もっと強くなる」と“二刀流”での活躍を誓った。

タレント出身だから人気があるわけではない。ファン層は全く違い、プロレス転向によって離れていく人もいるという。アイドル出身のレスラーたちは、そんなリスクがある中、正反対とも言える厳しい世界で、美と強さを追求しながら、リング上でのトップスターを目指している。【松熊洋介】