記者として相撲担当が一番長い。2番目がボクシング。以前はイベント時には真っ先に助っ人に行ったり、一般紙などは掛け持ち担当の記者が多かった。2つの競技には共通する面も多いからだろうか。

格闘技であり、個人競技である。一番似ているのは、部屋やジムに力士や選手が所属して育成するシステム。親方中心で部屋、本場所、巡業を、ジム会長が中心にジムや興行を運営と、組織も似ている。

一番の違いは勝負判定にあると思う。相撲は行司が裁くが審判は親方が務める。土俵下に座る5人は各一門から1人ずつで公平を保つ。大関照ノ富士が夏場所優勝したが、3敗中2敗は物言いの末の黒星。いずれも審判長は師匠伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)だった。

ボクシングは日本ボクシングコミッション(JBC)がこの任にある。創生期は親睦団体の全日本ボクシング協会(当時)に審判部が置かれ、試合を運営していた。52年に白井義男がダド・マリノに日本人初の世界挑戦となった。コミッション制度がないと試合が認められないため、急きょJBCが設立された。

試合を承認し、運営し、身内ではなく第三者として勝負を判定する。公平中立な立場にあるJBCが、揺らぐ事態となっている。世界王者井岡一翔に関するドーピング検査の問題だ。

昨年大みそかの田中恒成戦での検査で、禁止薬物が検出されたというもの。さまざまなずさんな規定、体制、対応が判明した。週刊誌が先行報道したことで、情報管理も問われている。

ドーピングについては勉強不足だが、五輪競技などに比べて規定の緩さは、経費から一定の理解はできる。それにしてもあきれた現状だった。検体を職員の自宅の冷蔵庫で保管したり、リュックに入れて運んだり。突っ込みどころ満載の管理体制があらわになった。

その1カ月ほど前にはジム会長が資格停止処分を受けた。ところが、日本プロボクシング協会の抗議で即座に白紙撤回もあった。前日計量時にJBC職員をどう喝などしたという。倫理委員会が事情聴取したのは職員だけで、本人、周辺の聴取はなし。処分告示はHPだけで、本人への通達はなかったという。

告示が数カ月遅れで掲載され、すでに処分期間が過ぎていたことがままあった。人事も公表されておらず、職員の担務、責任者が不明なことも多い。密室な広報体制にも大いなる問題を感じる。

井岡は「規定違反は認定できない」と処分はなく、一応の潔白は証明された。JBCは発表会見翌日、1週間後にも異例の2度のおわびをHPに掲載した。井岡側は日本協会へJBC役員の退任などを要求する上申書を提出した。そう簡単に不信感は消えない。

JBCはライセンスの発行料と試合の承認料で成り立つ。「金を払ってるんだから言うことを聞け」という乱暴な協会関係者も確かにいる。JBCは毅然(きぜん)とした態度で中立公平を保つしかないが、その足元からしてグラグラだ。

相撲とボクシング。不祥事が多いのも似ている感じがするのは記者だけだろうか。世の中に目を転じると、ガバナンスの改革は指摘されてもあまり進んでいないよう。JBCが本当に腹をすえて改革に取り組めるだろうか。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)