秋の祭典“格闘技ウイーク”が終わった。19日にRIZIN30大会、20日にK-1横浜大会、23日にはRISE横浜大会が行われ、3日間で約50試合の迫力ある熱いバトルが繰り広げられた。

東京オリンピック(五輪)・パラリンピックも終わり、燃え上がったスポーツの火を絶やさないよう、ファイターたちがリングの上で躍動し、大いに盛り上がった。その中で、勝利しても物足りない表情をする選手が多かったのが印象的だった。RIZINのメインで勝利した朝倉海が、判定勝利に「メインを任せてもらったのに…」と語るシーンがあった。RISEでは、ベイノアがねぎ魔神に勝利しながら納得の試合ができなかったことに「ねぎの試合だった」と肩を落とした。

格闘技の魅力の1つとして、ファンが自分たちにはできないものを見せてくれることがある。人を殴ったり、蹴り倒す姿を見ることで、スカッとしたり、ストレス発散になるのだと思う。その象徴的な形がKO。ファイターたちは戦う以上、KO(または1本勝ち)で相手を倒すことを狙う。

今回のKO決着は、

RIZIN…10試合中2試合

K-1…23試合中13試合

RISE…17試合中2試合

対照的な結果となったが、もちろん、KOがすべてではない。それでもRIZINやRISEを見たファンは「少なかったかな」と思った人もいたと思う。K-1中村プロデューサーは「K1はKOを狙って戦う競技。KOを狙う姿勢、倒しに行く攻撃を評価していく」と常々話しており、その通りの結果となった。

一方でRIZIN榊原CEOは、今大会を「リスクがあるが、1本やKOを目指して負けても評価は下げない。倒しに行ってほしい試合もあった」と振り返った。

RISE伊藤代表も「納得していない試合もあった。組まれている意味を分かっているのかな。ここでいい試合をしなければ、次はないという気持ちでやってくれないと」とあえて厳しい言葉を投げかけた。

RISEで那須川と対戦した鈴木は手数が少なく、有効打があまり奪えずに敗れた。「もっと強引に入っていけば良かったが、カウンターを意識し過ぎた」と話した。判定決着となったが、それこそが那須川の強さを物語った試合だった。那須川は「勝たないといけないことだけを考えていた。判定についても人それぞれあるだろうし、賛否あっていい」。リング上で相対する選手同士にしか分からない駆け引きもある。

レベルの拮抗(きっこう)している選手同士が戦うため、接戦になることは必至だ。数カ月の練習、過酷な減量をした上で、勝つ内容も求められる格闘家の世界は改めて厳しいものだと感じた。ファンもその思いを理解した上で見るからこそ、熱い声援を送る。だからこそ選手たちには、KOでも判定でも、勝っても負けても「やりきった」という表情でリングを降りてほしいと思う。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

ベイノア対ねぎ魔神 ねぎ魔神(左)に3回判定勝ちしたベイノア(2021年9月23日撮影)
ベイノア対ねぎ魔神 ねぎ魔神(左)に3回判定勝ちしたベイノア(2021年9月23日撮影)