カメルーン初のUFCヘビー級王者となったフランシス・ガヌー(36)がUFCとの契約を更新しなかった。

今月中旬の会見で、UFCのデイナ・ホワイト社長から明らかにされ、そのまま王座剥奪となった。現在は前UFCヘビー級王者、そしてフリーエージェントのガヌー。同社長によると、ヘビー級でUFC史上最高額のオファーを提示したものの、契約に至らず。同様の熱烈オファーを断ったのは元PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)以来、2人目の選手だったという。

打撃練習に励む写真を自身のSNSに投稿した前UFCヘビー級王者フランシス・ガヌー(左=ガヌーの公式インスタグラムより)
打撃練習に励む写真を自身のSNSに投稿した前UFCヘビー級王者フランシス・ガヌー(左=ガヌーの公式インスタグラムより)

UFCで6連勝中のガヌーは22年1月のUFC270大会で同級暫定王者シリル・ガーヌ(フランス)との王座統一戦を制し、初防衛に成功、総合格闘技界の最重量級の頂点に立った。しかしガーヌ戦前からひざの内側側副靱帯(じんたい)断裂などの重傷を負っていたことに加え、UFCとの契約問題が浮上。ガヌーは最終的に契約しない選択を取った。

注目されるのは今後の進路だ。昨年4月、プロボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(34=英国)が同級暫定王者ディリアン・ホワイト(34=英国)との王座統一戦で勝利した後、リング上にガヌーの姿があった。両者は将来的に対戦することを熱望した。もともとカメルーンからフランスに移住した際、強い興味があったのはボクシング。貧困から脱出し、稼ぐために勧められた総合格闘技に転向していた経緯もある。

米TMZスポーツに対し、ガヌーは「私は彼(フューリー)のアドバイザーの何人かと話しました」と明かした。今年4月開催を目指し、フューリーがWBA、IBF、WBO世界同級王者オレクサンドル・ウシク(36=ウクライナ)との4団体王座統一戦に向けて交渉中である現状を説明。

「彼らは4月にウシクとの試合に取り組んでいる。それまで彼は自由にはならない。ただ、その試合の前に合意できるかどうか試しているところだ」と明かした。

夏ごろにフューリーとのボクシングマッチが組まれることになれば、ガヌーにとっては準備期間が増える。そのため「私が望んでいるタイムラインに問題はなく、6月か7月になると予想している。これは実行可能だ」とプラス思考でトレーニングを積んでいるようだ。ウシク戦に勝利し、ヘビー級の4団体統一王者となったフューリーと対決することが、ガヌーにとって最高のシナリオだろう。

ガヌーは「結論を出すこと、何かを言うのは時期尚早だと思う。ただ私たちが検討していることは間違いない」と前向きに交渉を続ける姿勢だ。プロボクシングと総合格闘技の最重量級頂上決戦が実現すれば大きな話題になる。フューリーとの交渉は初期段階だが、ガヌーが総合格闘技最強の称号を捨て、フューリー戦に真剣であることは間違いない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)